災害時の備蓄、空間除菌に活躍。安定化二酸化塩素とは
厚生労働省は2021年10月末、WEBサイトを更新し、「新型コロナウイルスは、ウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込むことで感染する」と発表しました。これまで屋内での空気の除菌には空気清浄機や次亜塩素酸水の噴霧などの手法が用いられてきましたが、初期導入のコストや重量があり、扱いにくいなどの問題がありました。最近では導入コストが低く、軽量で、劣化しにくいという特長から「安定化二酸化塩素」の使用が官公庁をはじめとして進んでいるといいます。安定化二酸化塩素とはどんなものなのか、中部地方を中心に日本全国の官公庁、企業、教育機関に除菌製品の導入実績を持つ株式会社観舎の森田喜知也さんにお話を伺いました。
安定化二酸化塩素とは
二酸化塩素の沸点は11℃、融点は−59℃。常温ではガス体であり、光や熱で分解される性質から、取り扱いが難しく、輸送も困難な物質です。これに保存が可能になるような物質を添加し、二酸化塩素ガスが長期的に発生するように加工したものが安定化二酸化塩素です。弊社では二酸化塩素と塩素化イソシアルヌ酸を安定的に組み合わせ、顆粒状やタブレット上にしたものを使用しています。まずは二酸化塩素の特長についてご紹介します。
二酸化塩素の特長
通常の塩素剤は、塩素イオンが働くことで殺菌消毒がされます。しかし、塩素イオンがウイルスなどの有機物に触れると、トリハロメタンなどの塩素化合物が副生成されてしまいます。これらは人体や動物の身体に対して有害性を疑われている物質です。
二酸化塩素は、酸素原子の酸化力により蛋白質が主成分の病原菌を殺菌消毒し、有機物の腐敗を防いで、防腐の働きをします。消毒に使用してもら塩素剤のようにトリハロメタンは生成されません。長い残留効果があるため、大腸菌、コレラ菌、O-157、MRASやVREに対しても有効です。
安定化二酸化塩素の使い方
以前、安定化二酸化塩素入りの袋を首にかけるだけでインフルエンザが予防出来る、空間除菌が出来るとして販売されていた安定化二酸化塩素の商品に対して、消費者庁が「買うべきではない」と注意喚起した事例があるのを覚えている方もいらっしゃるはず。実は、気化した二酸化塩素は空気より重く、下に沈むという性質があるのです。商品の広告にあるように、首にかけているだけで、空間除菌効果を発揮するものではなく、6畳の空間で99%のウィルスを除去する効果が確認されたという実験結果があるだけ。この使用法では首かけタイプの安定化二酸化塩素の商品が市場から姿を消したのも仕方がありません。
正しい使い方は、タブレット状やフレーク状の安定化二酸化塩素を不織布などに包んだものを、エアコンや空調のフィルター近辺に置いておくことです。空気の対流に乗って気化した二酸化塩素が、まんべんなく密閉空間に広がり、空気中の病原菌やカビ、においなどに反応します。使用開始から2箇月ほど効果が維持されるので、コストパフォーマンスがよいというのも優れた点です。空気清浄機と違って導入費用が何万円もかからないのも、大きな利点といえるでしょう。使用から2箇月経った安定化二酸化塩素は、靴箱や鞄などに入れて消臭剤として、洗面所や浴槽の下水管の洗浄剤として再利用が出来ます。
水に溶かして除菌水を生成
水の中に数グラムの安定化二酸化塩素を溶かすだけで、10ℓの除菌水が生成可能。大変軽量で劣化しにくいという利点から、災害時の備蓄として官公庁や大手企業が導入し始めています。水の除菌に関しては1995年にプールの除菌への使用許可、2000年に水道水の除菌の使用許可を取得。大手スポーツクラブのプールや入浴施設などで幅広く使用されています。
児童施設・介護施設・救急車にも
マスクを長時間着用出来ない障害があるお子さんが集まる施設や、呼吸を補助する機械を着用されている患者さんがいらっしゃる病院、介護施設での院内感染予防対策は、職員の皆さんの頭を常に悩ませてきました。安定化二酸化塩素をエアコンに装着する方法であれば、軽く安価で導入コストもそれほどかかりません。密室になる救急車内の除菌にも安定化二酸化塩素が使用されるという報道もあります。この記事が、空気感染予防について皆さんが関心を持つきっかけになれば幸いです。