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【インタビュー】阪神タイガース 原口文仁さん|グラウンドに立てる喜びで、胸が一杯になったのを覚えています

原口文仁選手
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26歳の若さでステージ3Bの大腸がんと診断された阪神タイガースの原口文仁選手。シーズンオフの1月に手術を受け、その年の6月には一軍の試合に復帰。がんを克服して、代打の切り札として活躍している。がんとの闘い、そして復帰までを『ここに立つために』という一冊の著書にされた原口選手に、病気などの試練、そしてその乗り越え方について振り返ってもらった。

──がんとの闘い、そして復帰までを著書にされましたが、原口さんのキャリアは試練とその克服の連続ですね。

子供の頃に熱中出来たのが野球だけ。ひたすら野球で頑張って、念願のプロ野球選手になれたと思ったら、腰、左手、右肩……と毎年のように故障と怪我。3年目の2012年シーズンオフには育成選手契約になり、支配下登録から外れてしまいました。あの時は本当に将来に対して不安になったし、怪我で思う存分野球を出来ないことが悔しかったです。
今でこそ育成選手という制度は、支配下選手の枠を有効に使うため、怪我をした選手や有望な若手の受け皿として機能していますが、当時は戦力外に近いイメージがありました。

──育成選手の頃は何を励みに努力されましたか?

自分なりに目標を立てて、まずは小さなことから積み重ねていくしかありませんでした。「ここに立つために」と著書のタイトルにもあるように、プロ野球選手として公式戦のグラウンドに立つことを励みにしました。そのせいか、2016年のシーズンにいきなり支配下登録されて、一軍の先発捕手としてデビューした時も、変な焦りや緊張はなかったのを覚えています。調子のいい時だったので何となくいけそうだという自信もありました。

──2018年には勝負強い打撃で存在感を示しましたが、そのシーズンオフに大腸がんと診断されました。

まだ二十代でしたし健康にも気を遣っていたつもりなので、ただただ驚きました。また、当初は早期がんだと思っていたら、手術後にはステージ3Bという進行がん。とはいえ、まずは病気から回復して、出来るだけ早く復帰するしかありませんから、そこに向けて頑張るしかありません。手術までは極力以前通り。自主トレにも取り組みました。そして、手術後は傷が塞がって、身体を動かせるようになるまでは、ひたすら我慢。手術後の抗がん剤は、治療と並行して野球が出来るように、服用タイプのものにしてもらいました。

──そして、1月の手術を経て6月には一軍復帰という驚異的な回復ぶりでした。

お陰様で復帰戦では、フェンスを直撃するタイムリーヒット。この5日後にもサヨナラタイムリーを放つなどの結果を残せましたが、あの試合は、僕が代打で呼ばれる前に、ネクストバッターズサークルに立った時点で、尋常ではない雰囲気になりました。そして、打席での大歓声。待っていてくれたファンの皆さんの温かさ、支えてくれた周囲への感謝、そしてグラウンドに立てる喜びで、胸が一杯になったのを覚えています。

──がんは大きな病気ですし、恐怖や不安はあったのでは?

復帰後のオールスターゲームにもファンの皆さんに選出していただけたのですが、実は自分の頭の中で描いたイメージ通りでした。闘病中は5月には一軍に復帰して、オールスターゲームに出るのを、リアルにイメージして、リハビリや練習に打ち込みました。前向きなことを考えているほうが、恐怖や不安を忘れられますし、治療の成果だって出易いのではないでしょうか。本塁打を2本も打てるとまではイメージしていませんでしたが(笑)。

──来季への抱負を。

がんを克服して頑張っている自分を見て、入院中、闘病中の皆さんに少しでも勇気を与えられたと思います。来季は外野手に挑戦しますが、僕たちは試合に出て、グラウンドに立つことが、まず一番。どんな形でもチームに貢献して、今年はたった1勝の差で逃した優勝を目指します。

書籍情報
著者:原口文仁
発行:ベースボール・マガジン社
ISBN: 978-4-583-11386-9
定価:1,500円+税

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