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【俳優・津田寛治】東京は、自分から目的地に歩き始めると、途端に機能し始める街

インタビュー

北野武監督作品『ソナチネ』で映画デビュー。以来、名バイプレーヤーぶりを発揮している俳優の津田寛治さん。岡本崇監督の最新作品『ボールド アズ、君。』では、主人公の珠の心の居場所であるミニシアターの支配人・井澤雄一郎役として出演する。そんな津田さんが、チャンスに向かって自分から歩き出す転機となったのは、当時のマネージャーとの何気ない会話だった。

18歳で俳優を目指して、福井から上京されましたね。

上京して驚いたのは、東京の大人は、自分の苦労話を始めると際限がないこと。相手をしているうちに、気を許して、「俳優になりたくて上京しました」なんて打ち明けると、「絶対売れるよ」と煽てられ……気がついたら、金を騙し取られていたことがありました(笑)。

自分で自分を営業していたとか。

幾つかの事務所に騙されたり、劇団のチケットノルマに苦しんだりしながら、細々と活動していたある日、マネージャーに「最近、どんな映画を見ましたか」と尋ねたら、「映画を見る程、暇じゃないよ」と吐き捨てられて呆然としました。映画の世界に入りたくて上京したのに、全くかけ離れたところにいることを思い知らされたんです。

一度リセットが必要だと思って、事務所を辞め、レンタルビデオ屋で週に5〜6本借り、バイトが休みの日は、映画館に行って映画漬けの生活を送りました。そうすると否が応でも気になる監督が出てくるので、事務所を調べてアポなし訪問です。運がよければ、ドアが開いた瞬間に、監督本人が出て、話を聞いてもらえたこともありました。時間さえくれるなら、何しろ大好きな作品のことですから、幾らでも話せるんですよ。そうすると「じゃあ、次のオーディションに来なさいよ」となることがありました。

自分から動いてデビューに?

実は、そんな営業の直接の成果じゃなくて延長線上の話です。アルバイト先が老舗の録音スタジオと同じ建物にある喫茶店で、映画の関係者が出入りしていました。そこのママに「売り込んでもいいですか」と聞いたら、「どんどんおやりなさい」と快く背中を押してくれました。そんな中で北野武監督とご縁が出来て、1993年の『ソナチネ』に出演するチャンスを掴むことが出来たんです。

以前から自力で映画監督に営業して回るという行動をしていなかったら、まさかアルバイト先で売り込みしようなんて思わなかったし、あの北野監督にプロフィールを渡す度胸なんか出なかったでしょうね。

新作『ボールド アズ、君。』の主人公・珠は、目標に向かって必死に頑張ります。夢を目指す方へメッセージを。

上京したての頃は、遥か彼方にあると思っていた映画の世界が、実は自分の住んでいる街のすぐそばにありました。東京という街は、仕事して飯食って愚痴吐いて寝るルーティンを繰り返しているだけでは、大した恩恵がないけれど、自分から目的地に歩き始めると、途端に機能し始める場所なんだと気がつきました。街は、そこに住む人が作っていて、まるで人格を持った生命体と同じだから、いい関係を築くまでには、時間がかかるし、自分から歩み寄っていかなくちゃ、心を開いてくれない。必死でしがみついていたら、ある日突然、「お前、今日から家族な」って受け入れてくれる──夢を目指す者にとっての東京って、そんな場所なのかなと思います。

ヘアメイク:馬場エミリ/スタイリスト:三原千春/衣装:ヨーガンレール


映画『ボールド アズ、君。』
公式サイト https://kokokoromovie.com/boldaskimi/
3月29日(土)より
新宿K’s cinemaほか全国順次公開

出演:伊集院香織(みるきーうぇい)・後藤まりこ・刄田綴色(東京事変)・津田寛治
監督・脚本・音楽・編集:岡本崇
製作:コココロ制作 配給:Cinemago
あらすじ
人付き合いが苦手な主人公、南條珠(伊集院香織)は、小学生の頃からミニシアターを心の拠り所に、支配人の井澤雄一郎(津田寛治)を「神様」と慕っていた。
そんな珠には、もうひとりの「神様」がいる。それは、ロックバンド「翳ラズ」のボーカル、瓶子結衣子(後藤まりこ)だ。珠は結衣子の音楽から生きる希望を得ていた。
そんなある日、珠がバイトをする居酒屋に、たまたま結衣子がやってきて、珠がネットにアップした“弾いてみた動画”を見ていたことが発覚。
珠は「翳ラズと同じステージに立って直接お礼をいうこと」を目標に、さらに動画制作に精を出すが、行きつけのミニシアターが翳ラズのライブと同じタイミングで閉館するということを知り……

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