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【インタビュー】アトム法律事務所 代表弁護士 岡野武志さん|目標が超えるべき山だとしたら、私は皆さんとは違うルートから攻めていったということ

岡野武志サムネイル
インタビュー

全国11箇所(グループ含む)に法律事務所を展開するアトム法律事務所の代表であり、YouTubeの登録者数約100万人を誇るクリエイターでもある岡野武志弁護士。ドラマや映画の法律監修やTV出演など活躍の場は多岐に及ぶ。そんな岡野弁護士は、高等学校卒業後、渡米。大学には行かずフリーターを経て司法試験に合格した異色の経歴を持つ。YouTubeを始めるまでのエピソードを伺った。

岡野武志先生

弁護士を志したきっかけは?

高校生の頃は漠然と「自由に生きたい」と考えていて、何かしらの職業に就くことに対して積極的に夢を抱くことはありませんでした。正直にいえば、働きたくない(笑)。大阪の高等学校を卒業後、渡米し2年半ほど生活をし、帰国後は東京へ。フリーター生活をしながら、いつまでも自由に生きたいなんて子供みたいなことをいっていられないぞと思うようになりました。東京で家賃や食費、水道光熱費などを払って自活していくとなると、月に最低十数万は稼がないと暮らしていけません。23歳頃になってやっと社会で働いていくということに対して向き合わざるを得ない状況に追い込まれたわけです。

その時は、ただ高校を卒業しただけの、全くの手ぶらの状態。社会で活用出来る技術も知識も経験もありません。所謂「手に職をつける」にはどうしたらよいかと模索した時に、弁護士という仕事に可能性を感じ、司法試験に挑戦しようと決意しました。

高卒で司法試験に挑戦。随分と思いきりましたね

私が卒業した学校は中堅の進学校で、入試の目安の偏差値でいうと67くらい。入学後は成績優秀な進学クラスと、そうではないクラスに分かれるんです。私は成績が下の方のクラスでしたし、特別勉強が得意というわけではありませんでした。それなのに、高卒のまま司法試験に挑戦してやろうという発想になったのは、アメリカに行っていた経験が影響したのだと思います。

当時のアメリカは、インターネットの技術はあってもまだ普及していない時代。ガイドブックを見ながら自分で現地の店を開拓したり、ライブハウスを探したり、シェアハウスで暮らしたり。高校生の時はアメリカなんて海の彼方の世界のことで、全く想像出来なかったのが、いざ飛び込んでみると、まあまあ形になったんです。大学に進学していたとしたら、司法試験は「しんどそうやな」と先入観に縛られて、殻を破れない思考のままだったかもしれません。右も左もわからない土地で生活し、一から人間関係を作る、そのようなアメリカでの経験が、司法試験に対しての自信の裏付けになったのではないでしょうか。自分の世界を自分で広げていく経験を経ているので、「司法試験も所詮はテスト。真剣に取り組んだらいけるだろう」と、身構えずにとらえることが出来ました。

司法試験を受けることに不安はありませんでしたか?

私にとって司法試験に合格することは、目的を達成するために必要なひとつの目標。目標を超えるべき山と例えるなら、私は皆さんとは違うルートから攻めていったようなこと。それがモチベーションとなって、わくわくしたのを覚えています。周囲の友人は、私がアメリカに行った時も、司法試験に挑戦した時も、起業した時も、YouTubeを始めた時も、「また岡野が変なことを始めた」という反応(笑)。有難いことに、反対されたり馬鹿にされたりするようなことはありませんでした。応援してもらった気がします。

一番つらかったことは?

弁護士を目指してから5年後、2006年に司法試験に合格したんですが、2005年の試験に落ちた時はきつかったです。私は旧司法試験組なのですが、2006年からロースクール(法科大学院)卒業が受験資格のひとつになる新司法試験というものが始まりました。これは弁護士などの数を増やすための取り組みでしたが、私を含めて、以前から受験していた旧司法試験組にとっては逆に狭き門になってしまったのです。「こりゃヤバイ、めちゃくちゃ旧司法試験組の合格枠狭くなるやん」って(笑)。要するにロースクール組にパイを思い切り奪われているのに、私は資格上ロースクールには行っていませんから、旧司法試験組として少ない合格枠を目指して受験するほかないわけです。これがかえって発奮材料になったのでしょう。集中力が桁違いに上がりました。実際に2006年の旧司法試験組の合格枠は前年の1/3まで減りましたが、なんとか合格することが出来ました。

合格しても、就職難が待っていたとか。

司法修習生と呼ばれる研修期間を無事終えて、次は弁護士事務所に勤務してアソシエイトの弁護士として働くのが普通です。ところが就職活動を始めてみるとどの事務所も採用してくれません。司法試験さえ受かったら弁護士になれると思ったらそうはいきませんでした。司法試験合格者は東大・京大・早稲田・慶應など有名大学卒業生が多いですから、学歴が高い方が有利なのは当然のこと。就職活動で高卒の壁が大きく立ちはだかりました。

ちょうどこの時、自分がタクシーとの接触事故の当事者になったことがきっかけで、日本の弁護士事務所には刑事を専門としているところが極端に少ないことに気が付き、自分で刑事に特化した弁護士事務所を立ち上げようと思いついたのです。

まず、政策金融公庫から資金を調達し、永田町に12畳ほどのリビングと6畳の部屋がふたつあるマンションを借りました。2008年9月3日、現事務所の前身、アトム東京法律事務所の設立です。6畳の部屋の扉に会議室1、会議室2と書いてあるのですが、会議室2を開けると布団が敷いてある(笑)。事務所兼自宅です。開業当初は雇用関係からいうと完全なひとり親方。WEBマーケティングの分野に関して、アメリカ時代からの友人に手を貸してもらいました。受付の電話も最初は私自身で出ていましたが、開業から1箇月くらいしてから事務員を採用出来るまでになりました。そして2022年現在、グループとして11拠点にまで展開出来ました。支えてくれた周囲の方やスタッフには感謝の気持ちで一杯です。

YouTubeを始めたきっかけは?

面白そうだから挑戦してみようという動機でしたが、やるからには結果にはとことんこだわりました。それは、スタッフのためです。コンテンツ制作は私ひとりでやるわけではありません。撮影や動画編集をしてくれるスタッフが社内にいます。どこの企業もそうでしょうが、前例がない新規事業というものは、社内から冷たい目で見られるものです。多くの方に楽しんでもらうための動画ですから、皆が寡黙に仕事をしている最中に、社内で賑やかに撮影をするわけです。

もちろん大勢のスタッフがYouTubeでの活動を応援してくれていますが、中には口や顔に出さなくとも、いい感情を持っていないスタッフもいるかもしれません。そうなると動画に関わってくれているスタッフの、社内での立場がない。社内で胸を張って「岡野のYouTubeに携わっているんだぞ」と動画スタッフにいってもらえるような結果を、代表として出す覚悟で挑みました。

YouTubeを始めて法律事務所の経営に影響はありましたか。

一番影響を感じたのはリクルートですね。若い弁護士や司法試験合格者が、私たちの事務所を選んで応募してきてくれる。とても嬉しいことです。

私の動画は、特に集客を目的として制作していません。むしろ、大きなニュースが流れたタイミングに、皆さんの関心が高いテーマに絡めて、わかりやすく法律を説明するというスタイルをとっています。私の動画が、法律に興味を持つきっかけになってくれたら嬉しいですね。

入院中の読者にメッセージをお願いします。

私は、刑事事件で弁護を担当することがあります。罪を犯し、逮捕されて刑務所に入ることは、ポジティブなことではありません。しかし、刑務所に入った方でも、人生を長い目で見た時に、早めに逮捕されたことで罪を重ねずに済んだ、足が洗えてよかったというケースを本当にたくさん見てきました。一見ネガティブに思えても、振り返ってみれば幸いだったということはあると思うのです。

だから、入院に関しても自分の生活習慣を見直すきっかけになるかもしれないし、大切な方の存在を再認識するきっかけになるかもしれません。物事は全て表裏一体。どんなつらい時でも視点を変えれば、逆境をひっくり返すきっかけを見つけられると信じています。

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