古来日本はもとより、中国やインドでも万薬として使用されてきた枇杷ですが、最近でも健康に良いとされ、枇杷茶として愛飲されています。

今回は最近の研究成果を踏まえ、枇杷茶の効果をお伝えするとともに、注意点も含めて解説していきたいと思います。

枇杷とは?

枇杷はおよそ1500年前、仏教伝来とともに薬用として日本に伝わってきた中国が原産の植物です。

インドでは大薬王樹として、万病に効くとされていました。

江戸時代以降食用として栽培が進み、広く庶民の口に入るようになります。バラ科の木になる果実で、初夏が旬の食べ物です。

昔は多くの家の庭先に植えられていたものですが、傷みやすさもあり、最近では高級果実として売られていることが多いようです。木材は頑丈で、杖や木刀に使われてきました。

枇杷には、体内でビタミンAに変換されるβタカロテンやβクリプトキサンチンが含まれている他、抗酸化作用が強く注目されているポリフェノールも多く含まれています。

枇杷の葉は昔から鎮痛作用があるとされ、古くは天平時代に、光明皇后が施薬院で痛いところに枇杷葉を貼る枇杷葉療法を行った記録がある他、陰陽師も同様の治療法を行っていたようで、民間療法として普及していました。

楽器の琵琶は、まさにこの枇杷の形と似ていることからつけられた名で、同じ時代に日本に伝来したものだといいます。

このように、枇杷は日本人にとってなじみの深い植物といえます。

枇杷茶の効果は?

枇杷茶は江戸時代から庶民に親しまれてきました。

最近では、ポリフェノールを多く含むことや、くせがなくノンカフェインであることから、健康によく、子どもや高齢者も安心して飲めると勧められています。

歴史的にも健康維持のために飲まれてきた枇杷茶ですが、世界的には、補完代替療法の観点から、様々な植物由来の抽出物の効能が検証されており、枇杷葉の抽出物の効能も多くの研究によって検証されています。

たとえば、枇杷の葉抽出物(トリテルペン酸)を乳がん細胞が移植されたマウスに投与したところ、がん細胞の増殖を抑制されたとの報告があります(1)。

また、タバコによって引き起こされる慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対して、枇杷茶の抗炎症成分により抑制効果があったとの報告もあります(2)。

さらに、枇杷葉抽出物が筋肉機能を改善し、老齢マウスの筋肉損失を軽減したとの報告もあります(3)。

同様に、枇杷葉抽出物が骨粗しょう症を抑制する効果があることも報告されています(4)。

がん細胞増殖効果や、抗炎症作用、筋肉機能改善作用、骨粗しょう症抑制作用など多様な効果が示唆されており、枇杷茶の可能性を感じさせてくれる報告が多くみられます。ただ、これらの研究はいずれも動物実験にとどまっており、ヒトに対する検証はまだまだ少ないのが現状です。

ヒトに対する研究報告としては、枇杷葉抽出物を健常成人に投与し、筋力、筋肉量、筋肉機能、および代謝への影響を検証したものがあります(5)。

この研究は、枇杷の葉に含まれるウルソール酸という成分が骨格筋萎縮を予防するとの研究報告を踏まえて実施されました。その結果、女性被験者の右手握力が有意にアップしたという結果を得られましたが、筋力や筋肉量に変化は見られませんでした。

枇杷茶の注意点は?

このように、今後の研究成果が気になる枇杷茶ではありますが、最近枇杷茶に関する重要な注意喚起もされています。

日本医師会によると、枇杷の種にはアミダグリンという成分が含まれており、このアミダグリンにはシアン化合物が含まれており、シアン化合物が体内で分解されると、有毒な青酸が発生するおそれがあるのです(6)。

青酸は大量に摂取すると、頭痛、めまい、悪心、嘔吐などの中毒症状を起こし、場合によっては死に至ることもあります。実際海外の症例で、多量のアミダグリンを摂取した人が、重篤な肝障害や昏睡、けいれん、ショックなどを引き起こし死亡した事例が紹介されています。

特に注意すべきは、枇杷の種子を粉末にした食品ですが、これらは特に高濃度のシアン化合物を含んでいることがあり、この間消費者庁のリコール対象となり、自主回収されています。

枇杷茶は、葉や種子を原材料にして作られます。シアン化合物の安全基準は食品衛生法で定められています。葉が原材料の場合は、乾燥した状態でもシアン化合物は微量しか含まれませんが、種子が原材料の場合には、乾燥した状態では基準を上回るシアン化合物が含まれている場合があります。

ただし、お湯に浸してお茶にした状態であれば、いずれも基準内にとどまります。

このことから、枇杷茶を飲む際には、一回に大量に飲まない、茶葉を大量に使うなどして濃くして飲まないといった注意が必要でしょう。

健康によいとされる成分を信じすぎない

毒性のあるシアン化合物が含まれているアミダグリンは、枇杷だけでなく、桃や梅、杏などの身近な果物の種子に含まれています。実は、このアミダグリンはかつてビタミンB17と呼ばれたり、がんを抑制するとしてアメリカやメキシコでがんの治療に使われていたりした時期がありました(7)。

しかし、現在はいずれの説も否定されています。FDA(米国食品医薬品局)は、アミダグリンの販売自体を禁止しています。それでもインターネットの通信販売などでいまだに販売されている現状もあります。

このように、過去に科学的によいとされた成分であっても、検証されるなかで、効果が乏しかったり、逆に弊害の方が大きかったりすることが明らかになるのは珍しいことはでありません。安全性を確認しながら適量を楽しむという姿勢が大切です。

枇杷茶を楽しむために

ここまで、枇杷茶の効果と注意点について解説してきました。

枇杷葉抽出物の健康に対する様々な効果は、今後ますます明らかになっていく可能性があります。人に対する研究をしていくなかで、効果的な成分や量が明らかになり、病気予防につながるかもしれません。

ただ、それとは別に、昔から庶民のお茶として親しまれてきた枇杷茶自体を楽しみたいとも思います。枇杷茶はくせがなく、子どもから高齢者まで安心して飲めるお茶です。味はほうじ茶に少し似ています。

もちろん、一度に大量に飲んだり、高濃度にしたり、種子を摂取したりするのは避ける必要がありますが、どんな食べ物でも誤った調理方法や過剰摂取をすれば害になりうる点は同じですよね。

枇杷茶以外にも、日本人が古来親しんできた食品がいまさまざまな科学的な研究によって見直されてきています。

私たち自身も伝統的な食品を普段の生活のなかに積極的に取り入れながら、歴史と伝統を引き継ぎながら、健康も維持していきたいですね。

看護師 古川正造

参考文献

(1)MK You,Loquat (Eriobotrya japonica) leaf extract inhibits the growth of MDA-MB-231 tumors in nude mouse xenografts and invasion of MDA-MB-231 cells,2016,

https://synapse.koreamed.org/DOIx.php?id=10.4162/nrp.2016.10.2.139

(2)T Jian, X Ding,Triterpene Acids of Loquat Leaf Improve Inflammation in Cigarette Smoking Induced COPD by Regulating AMPK/Nrf2 and NFκB Pathways,2020,

https://www.mdpi.com/2072-6643/12/3/657

(3)M. Rondanelli, Systematic Review on Phytoconstituents and Pharmacological activities of Eriobotrya japonica,

https://www.hindawi.com/journals/ecam/2016/5970367/

(4)Y Deng, Osteoprotective effect of echinocystic acid, a triterpone component from Eclipta prostrata,in ovariectomy-induced osteoporotic rats,2015, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4552887/

(5)Young Hye Cho,Effect of Loquat Leaf Extract on Muscle Strength, Muscle Mass, and Muscle Function in Healthy Adults: A Randomized, Double-Blinded, and Placebo-Controlled Trial,2016,https://www.hindawi.com/journals/ecam/2016/4301621/

(6)注意喚起 File.2,日本医師会,https://www.med.or.jp/people/knkshoku/biwa/,2020/3/19閲覧

(7)アミグダリンについて (Ver.190121),国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所,https://hfnet.nibiohn.go.jp /contents/detail678.html,2020/3/19閲覧

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