精子バンクの仕組みと知っておくべき知識を紹介

精子バンク_サムネ
健康・介護・生活

欧米などでは、不妊治療の一助として「精子バンク」が活用されていますが、日本では法の整備や利用可能な施設が少なく、実稼働もあまりできていないのが現状です。

しかし、不妊治療や同性婚など多様なニーズに答えるための方法として、海外ではビジネス展開もされており、少子化が危惧されている日本でも知っておくべき情報といえるでしょう。

この記事では、精子バンクの基本的な仕組みや注意点について紹介していきます。

精子バンク概要
  • 精子バンクは希望するドナーを選び、精子を提供して貰うことが可能
  • 費用が高額で、場合によっては複数回にわたり利用しなければならない
  • 日本では十分に制度が整っていない

精子バンクとは?

精子バンク_とは

精子バンクとは、ドナーと呼ばれる男性提供者の精子を凍結し、保存しておくことで必要に応じて希望者に有料で提供する仕組みです。

欧米では、既に不妊治療や同性婚を望む方に利用されています。

精子バンクに保存される精子は、感染症の有無や遺伝病などを精査し、問題ないと判断されたものが登録されます。

登録された精子は、ドナーの人種や身長、体重などの情報が公開されています。

希望者は、自身の望む条件のドナーを検索し、企業や民間組織を介して提供してもらうことができるのです。

提供される精子の状態

精子バンク_状態

登録されている精子は、凍結され保存された状態です。

凍結前の状態では、精子の運動率など状態が良い物を厳選し保存します。

運動率のよい精子であれば、受精する確率も高まりやすくなるためです。

日本の精子バンクの現状は?

精子バンク_日本

日本では、欧米に比べて精子バンクの利用や活動は進んでいない状況です。

無精子症の対策として、非配偶者間の人工授精(AID)を提供している婦人科も存在しますが、実施可能な医療機関も少なく減少傾向にあります。

日本において大きな役割を担っていた、慶應大学病院も2019年には、ドナーの減少などを理由にAIDによる治療を中断しています。

子どもの出自について

精子バンク_出自

日本では現状匿名の精子しか提供されていないため、AIDで生まれた子どもは、出自を知ることができません。

1949年以降に1万5,000人程が人工授精により出生していますが、出自を知る権利については明確に定義されていません。

そのため、精子バンクなどを利用したり、AIDにより産まれたかどうかを子どもに教えるか判断するのは、親に委ねられているのです。

一方、欧米諸国では匿名、非匿名での精子が提供されています。

日本でも精子バンクを利用する方の中には、父親を知りたいと言う声もあり、ドナーになる方が少なくなっているのです。

日本にも世界的な企業が参入し、今後法の整備や倫理観がどのように変化していくかにも注目されているのです。

精子バンクのドナーの条件

精子バンク_ドナー

ドナーとして精子を提供するためには、事前に血液検査や感染症の検査を行い、健康状態を確認する義務があります。

喫煙者やアルコール依存症などの場合には、ドナーに登録することができません。

他にも、民間の会社では精子バンクのドナーになる為に、若い男性を対象とするため20歳~35歳と制限を設けているところがあるなど、条件面は厳格な審査があるのです。

精子バンクの費用の目安

精子バンク_費用

精子バンクを利用する際の費用は、提供先によって異なりますが、1回あたり10万円以上と決して安くはありません。

購入する精子の他にも、受精させるための技術料金もかかります。

何度も受精が難しかった場合には、その分費用が掛かるため、精神的にも経済的にも負担となってしまいます。

どんな場合に活用されるのか?

精子バンク_活用

同性でも家庭を持ちたい、子どもを育てたいなど多様なニーズは、精子バンクを活用することで叶えることができるかもしれません。

また、男性が病気の場合に精子を凍結しておくことで、将来的に遺伝子を残す事にも活用することができるのです。

では、精子バンクの活用方法をより具体的に紹介していきます。

不妊治療

比較的イメージしやすいのが、不妊治療による精子バンクの活用ではないでしょうか。

体外受精や人工授精など、不妊治療では、配偶者間において状態のよい保存した精子を活用するために精子バンクが利用されます。

また、男性側の生殖機能に低下や異常がある場合には、第三者のボランティアにより提供された精子を活用し人工的に受精を促進するのです。

シングルマザー

子どもは欲しいけど、パートナーは不要と考える方も増えています。

キャリア形成と妊娠・出産を両立することが難しかったり、結婚してパートナーと子育てをすることを望まない方など、多様な考えがあるのです。

そのため、独身女性が自身のタイミングと年齢を考えながら妊娠を検討できる精子バンクの需要は高まりやすいと言えるでしょう。

同性婚

欧米では、同性婚は認められており、日本でも徐々に同性婚を望む風潮が起きています。

欧米では、子どもを望む同性カップルが精子バンクを活用して妊娠をすることは珍しくありません。

日本での数は少ないですが、精子バンクはインターネットを介して、だれでも選択した精子を手に入れることができます。

今後精子バンクを活用した家庭も増えていくのではないでしょうか。

男性が悪性腫瘍の治療を受けるケースでも

一方で、男性が悪性腫瘍や白血病などの病気の為に、今後精子に影響を及ぼす治療を受ける場合にも、精子バンクは活用されます。

抗がん剤などの中には、副作用として造精機能が低下するものもあります。

そのため、癌治療が無事にすんだとしても、子どもをつくることが難しくなるのです。

自身の遺伝子を残したい、将来的にパートナーと子どもが欲しいと望む男性も、精子バンクに自身の精子を保存することができる仕組みです。

精子バンクの注意点

精子バンク_注意点

精子バンクを利用し、不妊治療を行うと高額な費用となります。

そのため、最近では「精子バンク」のキーワードを利用した、マッチングサービスも少なくはないのです。

マッチングサービスでは、精子の提供者に謝礼を支払い精子を提供してもらいます。

もちろん、事前に検査を済ませているとよいですが、中には性交渉を伴い提供してもらうケースもあるのです。

そのような場合には、きちんと検査をしていない場合には、感染症などのリスクもにも配慮しなければならないでしょう。

また、提供者との関係性においては、トラブルに発展してしまうことも考えられるのです。

そのため、精子バンクを利用するには、信頼できる医療機関や民営企業など事前に調べて活用するようにしましょう。

精子バンク|まとめ

精子バンク_まとめ

精子バンクまとめ
  • 精子バンクは希望するドナーを選び、精子を提供して貰うことが可能
  • 費用が高額で、場合によっては複数回にわたり利用しなければならない
  • 日本では十分に制度が整っていない

現状は法の整備や費用の問題など、精子バンクを活用することにハードルを感じてしまう方もいるでしょう。

また、医療機関の参入も少なく、国内でのドナーは不足しています。

一方、不妊治療や同性婚などが背景にあり、子どもを切実に望む方にとっては必要な仕組みです。

日本にも世界最大の精子バンクが進出しており、今後精子バンクを取り巻くルールや状況は変わっていくのではないでしょうか。

ピックアップ記事

関連記事一覧