膠原病ってなに?症状や原因、治療法、その他の自己免疫疾患を解説
膠原病という言葉を聞いたことがある人は多いですが、どんな病気かはあまり知られていません。
膠原病は、ひとつの病気を表す名前ではなく、自己免疫疾患のうち結合組織に慢性的な炎症が生じる病気の総称です。
以前は治療が難しい病気でしたが、最近は医療技術の進歩により、適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できるようになっています。
ここでは、膠原病の症状や原因、治療法などをご紹介します。
- 自己免疫疾患の中で、結合組織の変性をきたす炎症性疾患、関節や筋肉などの運動器官に痛みが生じる疾患、これらを満たす病気
- 初期症状は関節の腫れやこわばり・痛み、発熱、倦怠感、体重の減少、筋肉の痛みや筋力低下、皮膚に紅斑や紫斑が現れる
- 膠原病の原因は、まだわかっていない
- 膠原病の発症を予防する方法は現在のところない
膠原病とは?
自己免疫疾患の中で、結合組織の変性をきたす炎症性疾患、関節や筋肉などの運動器官に痛みが生じる疾患、これらを満たす病気を膠原病と呼びます。
男性に比べると女性の発症率が明らかに高いという特徴があります。
自己免疫疾患とは?
自己免疫疾患とは、本来自分の体を守ってくれるはずの免疫システムが異常をきたし、自分自身の体を攻撃してしまう病気です。
自己免疫疾患が起こる原因は不明で、遺伝が関係していることや、発症の引き金となる環境因子があることがわかっています。
膠原病の初期症状は?
膠原病の症状は多岐に渡り個々の病気によって異なっていますが、初期症状として、関節の腫れやこわばり・痛み、発熱、倦怠感、体重の減少、筋肉の痛みや筋力低下、皮膚に紅斑や紫斑が現れるなどがあります。
また、手足を冷たい水につけたときや寒い日の朝に、手足の先が白く変化してしびれなどが現れるレイノー現象は、膠原病の特徴的な初期症状です。
膠原病に含まれる病気は?
全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、混合性結合組織病、ベーチェット病、結節性動脈周囲炎、大動脈炎症候群、ウェゲナー肉芽種症、悪性関節リウマチ、シェーグレン症候群、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性肉芽種性血管炎、成人スティル病、好酸球性筋膜炎、側頭動脈炎などが膠原病に分類されています。
ご紹介した以外の病気も膠原病として分類される場合もありますし、病気の原因が明らかになることでそれまで膠原病に分類されていなかった病気が含まれたり、分類されていた病気が外れたりすることがあります。
膠原病の原因ってなに?予防できるの?
膠原病の原因は、まだわかっていません。
誰でも自身を攻撃してしまう細胞をもっていると考えられていますが、通常それは制御されているため、問題とはなりません。
しかし、ストレスや感染症などが引き金となり制御できなくなると考えられています。
また、膠原病は、遺伝的要因はそれほど高くはありませんが、遺伝が関係しているという報告があります。
膠原病を発症しやすい遺伝子を持っている人が、ストレスなどの環境因子が引き金となって発症するといわれています。
膠原病って予防できるの?
膠原病の発症を予防する方法は現在のところありません。
しかし、悪化や合併症の発症の予防はできます。
膠原病を悪化させる原因として考えられているのは、寒冷刺激・ストレス・感染症・紫外線などがあります。
寒冷刺激とは、「冷たい」「ひんやり」と感じるような刺激のことです。
ストレスを全く感じないような生活を送ることは、現代社会では難しいかもしれませんが、過度なストレスを感じるような生活を送らないようにすることや、ストレスが溜まらないように発散させことなどが大切です。
感染症対策は、バランスの取れた食事と十分な睡眠をとるように心掛け、免疫力が低下しないようにすることです。
また、頻繁に手を洗ったり、風邪をひいたら出来るだけ早く受診して、症状が軽いうちに治療することが重要です。
小さな傷口から感染が起こる可能性もあるため、傷ついて手で直接ものに触らないように手袋などをすることも予防になります。
紫外線対策は、日傘や帽子、長袖などで直射日光を出来るだけ避け、日焼け止めクリームなどを塗ると予防となります。
膠原病の治療法は?
膠原病は完全に治癒するのが難しい病気で、悪化しないようにコントロールして上手に付き合っていくことが大切です。
上手にコントロールして日常生活を送っている方は、たくさんいます。
治療の中心は投薬治療ですが、それと併行して症状が悪化しないように日常生活を注意して送らなければいけません。
また、免疫細胞により生じた自己抗体やサイトカインなどの膠原病の原因となる物質を、血液中から取り除く治療も行われるようになっています。
よく使われている薬は、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、副腎皮質ステロイド、抗リウマチ薬、免疫抑制薬などです。
それぞれの薬の特徴をご紹介します。
非ステロイド抗炎症薬
イブプロフェン、アスピリンやインドメタシンなどが代表的な薬の非ステロイド抗炎症薬は、炎症や痛みを和らげる効果があり、発熱や関節痛、筋肉痛などの症状を訴えている患者に有効です。
病気自体の進行抑制効果はありませんが、服用後速やかに効果が発現するため対症療法的に使用されています。
副腎皮質ステロイド
ステロイドは炎症と免疫異常を抑制する働きがあるため、多くの膠原病で第一選択薬とみなされています。
ステロイドと聞くと、効果はあるが副作用が強いという印象を持っている人が多いでしょう。
確かに骨粗鬆症や感染症にかかりやすくなるなどの副作用はありますが、医師の指導のもとで適切に使用していれば、問題ありません。
しかし、自分の判断でステロイドの服用をやめると、頭痛や倦怠感、血圧低下などの症状が出る ステロイド離脱症候群を発症する可能性があるため、服用量は必ず医師に相談して決めなければいけません。
免疫抑制薬
ステロイドで効果がみられない場合や、ステロイドの服用量を抑えたい場合などに、シクロフォスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制薬を服用することもあります。
白血球や赤血球の減少や、感染症にかかりやすくなるなどの副作用が現れることがあります。
抗リウマチ薬
リウマトレックスなどの抗リウマチ薬は、活動性の高い関節リウマチなどで使用されています。
効果の発現は遅いですが持続性があり、進行を遅らせる可能性があります。NSAIDsや副腎皮質ステロイドとの併用が可能です。
膠原病以外の自己免疫疾患は?
膠原病以外にも自己免疫疾患はたくさんあります。
よく知られている自己免疫疾患をいくつかご紹介します。
バセドウ病
1度は聞いたことがある病気だと思いますが、バセドウ病も自己免疫疾患です。
甲状腺刺激ホルモン受容体に対しての自己抗体ができ、自己抗体が甲状腺刺激ホルモン受容体を刺激することにより甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまい、さまざまな症状が現れます。
主な症状は、首元の腫れ、多汗、動悸、体重減少、眼球突出、疲れやすくなるなどがあります。
薬物治療が中心ですが、症状に改善が認められない場合は手術や放射線治療が行われることがあります。
甲状腺ホルモンの生成が低下する橋本病も自己免疫疾患のひとつです。
Ⅰ型糖尿病
Ⅰ型糖尿病には自己免疫性と特発性があり、自己免疫性のⅠ型糖尿病は自己免疫疾患と考えられています。
自己免疫が関係していることは、Ⅰ型糖尿病の患者の血液中に、GAD抗体やIA-2抗体が検出されることがあることからわかります。
Ⅰ型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が自己免疫によって破壊されてしまい、インスリンが全くあるいはほとんど分泌されずに血糖値があがってしまう病気です。
インスリンの補充が必要で、重症の場合は膵臓移植が行われることもあります。
膠原病のまとめ
- 膠原病は結合組織に炎症が生じる自己免疫疾患の総称
- 明確な原因は不明だが、遺伝要因と環境要因が組み合わさって発症すると考えられている
- 膠原病を完治することは難しく、悪化しないように上手にコントロールすることを目指す
- 治療には、副腎皮質ステロイド薬や非ステロイド抗炎症薬、免疫抑制薬などが使われている
- 悪化させないように、寒冷刺激・ストレス・感染症・紫外線などに注意して生活を送る必要がある