NIPT(新型出生前診断)はどんな検査?知っておきたいメリット・デメリット
日本でも2013年から受けられるようになった新型出生前診断(NIPT)ですが、実際のところNIPTについてあまりよく知らないという方は多いと思います。
中にはNIPT(新型出生前診断)の知識やメリット・デメリットを知らずに受ける方も多いようです。
NIPTのことをあまり知らずに受けてしまうと…
安心したくてNIPTを受けてみたが、逆に不安になってしまった
NIPTの結果を聞かされて大きなショックをうけてしまった
など、もしかすると後悔してしまうことになるかもしれません。
この記事ではNIPT(新型出生前診断)を受けるにあたって後悔しないために知っておきたい基本的な知識やメリット・デメリット、そして施設選びに関する情報をご紹介します。
NIPT(新型出生前診断)とは?要約
- NIPTとは胎児の染色体異常を調べる検査である
- NIPTを受ける最大のメリットは生まれてくる前に染色体疾患がわかり、赤ちゃんを受け入れる準備が早く出来ること
- NIPTについて相談出来る遺伝カウンセリングがある
- 認定施設・無認定施設のどちらで検査を受けるかは何を優先するかで決まる
- 無認定施設でNIPTをうける時は事前に確認するべき4つのポイントがある
NIPT(新型出生前診断)を受けることができる病院や施設についてはこの記事で詳しく解説しています。
認可施設・無認可施設も併せて紹介しているのでぜひご覧ください。
Contents
NIPT(新型出生前診断)の基礎知識
NIPTとはNon-Invasive Prenatal genetic Testingの略語で、直訳すると非侵襲的な母体血を用いた出生前遺伝学的検査のことをいいます。
簡単にいうと「お母さんとおなかの中の赤ちゃんのカラダを傷つけずに染色体異常について調べられる検査」です。
なぜお母さんと赤ちゃんのカラダを傷つけずに検査出来るかというと、NIPTは採血で検査が可能だからです。
お母さんの血液の中には赤ちゃんのDNAが含まれているのでお母さんの血液を調べれば赤ちゃんの状態がわかります。
NIPTでわかる染色体疾患は以下の3種類です。
NIPTとは?要約
- 21トリソミー(ダウン症候群)
- 18トリソミー(エドワーズ症候群)
- 13トリソミー(パトウ症候群)
では、3種類の染色体疾患について解説していきます。
染色体疾患の種類
そもそも染色体疾患とはなんでしょうか。
基本的に2本で1対であるはずの染色体が1本多かったり、少なかったりすることで遺伝子情報にエラーが生じます。
すると赤ちゃんの成長に影響してしまい、先天性の疾患や体質の原因となる染色体疾患となります。
染色体疾患の中でも発生頻度が高いのが21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーです。
トリソミーとは染色体の本数が3本ある状態のことを指し、ダウン症候群の場合は21番目の染色体が3本ある場合に発生します。
それぞれの発生頻度や特徴を表にまとめました。
発生頻度 (全染色体疾患中) |
身体的特徴 | 寿命 | |
---|---|---|---|
21トリソミー (ダウン症候群) |
53% | 成長障害 筋肉の緊張低下 特徴的顔貌 |
50-60歳 |
18トリソミー (エドワーズ症候群) |
13% | 胎児期からの成長障害 呼吸障害・摂食障害 |
胎児死亡も高頻度(50%) 50%は1か月 90%は1年 |
13トリソミー (パトウ症候群) |
5% | 成長障害 呼吸障害・摂食障害 |
90%は1年以内 |
(引用:NIPTコンソーシアム配布資料より)
出生前検査の種類
染色体疾患を調べる出生前検査にはいくつか種類があり、検査の種類ごとに実施時期・わかること・限界・検査に伴うリスク等に特徴があります。
非確定的検査
非確定的検査では染色体疾患のあり/なしをハッキリと診断出来ません。
種類は以下のものがあります。
検査の種類
- 超音波計測(初期NTなど)
- 母体血清マーカー検査(クアトロ検査、トリプルマーカー検査
- 母体血胎児染色体検査
上記の中でNIPTは母体血胎児染色体検査に当てはまります。
非確定的検査はお母さんの採血のみで検査が行えるので流産や死産のリスクはありません。
結果が陽性であれば疾患がある可能性が高く、陰性であれば疾患がない可能性が高いという診断を行います。
そのため、陽性と診断されても生まれてきたら実際は染色体疾患がなかったということもありえます。
確定的検査
確定的検査は染色体疾患の有無をハッキリと確定させる診断です。
方法としてお母さんのおなかに細い針を刺して羊水を採取するため、流産や死産のリスクがあります。
種類は以下のものがあります。
確定的検査リスク
- 絨毛染色体検査 流産・死産リスク 1/100
- 羊水染色体検査 流産・死産リスク 1/300
NIPTの特徴
非確定的検査に分類されるNIPTには以下のような特徴があります。
NIPTの特徴
- 検査の精度が高い
- 10週目から16週目まで検査が出来る
- 流産や死産のリスクがない
上記の特徴として特筆すべきは検査の精度の高さです。
ダウン症候群の場合はお母さんの年齢が35歳~45歳であれば、陽性と判断された時に実際に生まれてくる赤ちゃんに染色体疾患がある確率が80%~98.5%とかなり高いです。
また、陰性と診断された場合は染色体疾患の種類やお母さんの年齢に関係なく99.9%の確率で赤ちゃんに染色体疾患がなく生まれてきます。
NIPTの費用
NIPTの費用も検討事項のひとつにあると思います。
検査費用は医療機関によって異なりますが、NIPTの費用相場は15万~21万程度です。
保険適応外の検査であるため全額負担となります。
さらに施設によってはNIPTで陽性が出た場合には確定的検査(羊水染色体検査など)を行うため追加費用として10万~20万かかることもあります。
また医療機関によってはNIPT実施前後での遺伝カウンセリングに別途料金が発生する場合もあります。(例:30分で5千円~1万円など)
NIPTを受ける目的
NIPTを受けるにあたって一番考えておいた方がよいのが検査を受ける目的です。
NIPTは全てのお母さんが受ける検査ではなく、NIPTを受けなかったからといって妊娠や出産の時に特に困ることもありません。
おなかの中の赤ちゃんの染色体について知りたいと思うかどうかはお母さん・お父さんの考え方次第です。
例えば
NIPTを受ける目的
- 高齢出産だし、障がいがあった時に生まれてくる赤ちゃんのために準備してあげたい
- もし障がいがあったらと思うと不安だし、NIPTを受けてみたい
- 障がいがあることがわかった時に堕胎も視野に入れたい
どのような考えや目的であれ結果を知った時に自分はどうしたいかを明確にしておく必要があります。
そうしないと検査を受けたことで思い悩む時間が増えてしまったり、検査結果に大きなショックを受けて立ち直れなかったりする可能性が出てきます。
しかし、実際のところ初めから自分の気持ちや考えを整理したうえで目的をもってNIPTを受けることが難しいのも事実です。
「NIPTは受けてみたいけど、実際はどんな感じなんだろう? 誰か詳しい方が教えてくれないかな…?」
こんな悩みを解決するために遺伝カウンセリングというものがあります。
NIPTの理解を支援する遺伝カウンセリングとは
遺伝カウンセリングとはNIPTについての正確な情報を正しく理解し、様々な問題点を整理することによりそれぞれの方にとっての選択をするためのお手伝いです。
遺伝カウンセリングで教えてくれること
- NIPT結果でわかること・わからないこと
- NIPT以外の検査の選択肢について
- 染色体異常を有する子どもの成長の仕方や健康状態に関すること
- 染色体異常を有する子どもや家族が利用出来る行政の支援や民間サービスについて
基本的に遺伝カウンセリングで相談に乗ってくれるのはその道のプロである臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーです。
厚生労働省のアンケート結果によるとNIPTを受けた約94%の方が遺伝カウンセリングの内容に満足しています。
あなたもおなかの赤ちゃんについて心配なことがあれば、NIPTを受けるかどうかに関わらず遺伝カウンセリングを受けてみるのもいいかもしれません。
NIPT(新型出生前診断)のメリット・デメリット
NIPT(新型出生前診断)を受けるために遺伝カウンセリングを紹介しましたが、NIPTを受ける際のメリット・デメリットも事前に知っておきたい所です。
それではNIPTのメリットとデメリットについて解説していきます。
NIPT(新型出生前診断)のメリット
NIPTのメリットには以下のものがあります。
NIPTのメリット
- 赤ちゃんが生まれてくる前から染色体疾患の有無の可能性がわかる
- 赤ちゃんを受け入れるための準備時間が作れる
- お母さんや赤ちゃんへの負担が少ない
NIPT(新型出生前診断)の最大のメリットは生まれてくる前から赤ちゃんの状態を知ることで、お母さん・お父さんが赤ちゃんを迎え入れる準備時間を作れることにあります。
仮に検査で陽性となった場合に遺伝カウンセリングで相談しながらお母さん・お父さんの心の準備と環境の準備が行えます。
そうすることで親として正しい疾患についての知識を身に付け、成長とともに適切な治療やフォローが受け入れられるようになるなど先回りして対応が出来ます。
NIPT(新型出生前診断)のデメリット
一方でNIPTには以下のようなデメリットもあります。
NIPTのデメリット
- 必ず不安が解決出来るわけではない
- 通常は3つの染色体疾患しかわからない
- 費用がかかる
NIPTを受ける理由としておなかの赤ちゃんに染色体疾患がないことを知って安心したいというお母さんも多いようです。
しかし、大きなデメリットのひとつとして検査で陽性となった場合にはショックを受けてしまい、思い悩む時間が長くなってしまいます。
「こんなことなら知らない方が良かった…」と感じる方も少なからずいるようです。
また仮に陰性だとしても疾患がある可能性は0%ではないので不安がぬぐえない場合もあります。
だからこそ先ほども述べたようにNIPTを受ける目的をしっかりと持つことが重要となります。
NIPT(新型出生前診断)の認定施設と無認定施設の比較
あまり知られていませんが、NIPTを受けられる医療機関の中でも厚生労働省が認可している認定施設と厚生労働省が認可していない無認定施設があります。
認定施設は2020年6月時点で109施設であり、認定施設が存在しない都道府県があるなどあまり多いとはいえないのが現状です。
「遺伝子・健康・社会」検討委員会HPで都道府県別の認定施設を確認することが出来ますので、気になる方はご覧ください。
基本的には厚生労働省は認定施設でNIPTを受けることをすすめていますが、年々NIPTを希望する方が増えているのに対して認定施設が追いつかずNIPTの実施数に限界があるという課題を抱えています。
実際、日本産婦人科医会のアンケート調査によるとNIPTを受けた半数以上の方が無認定施設で検査を受けています。
また以下の条件がいずれかに当てはまらないと認定施設でNIPTは受けられません。
認定施設でNIPTを受ける条件
- 胎児超音波検査で胎児に染色体の異常がある可能性がわかった場合
- 母体血清マーカー検査で胎児に染色体の異常がある可能性がわかった場合
- 過去に染色体疾患の赤ちゃんを妊娠した経験がある場合
- 出産時の妊婦の年齢が35歳以上である場合
- 両親のどちらかが均衡型ロバートソン転座をもつ場合
こちらでは認定施設と無認定施設のそれぞれの特徴からメリット・デメリットをまとめています。施設を選ぶ時の参考にしてください。
NIPT(新型出生前診断)認定施設のメリット・デメリット
認定施設のメリット
- 厚生労働省が認めており、質が保証されている
- 臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーが必ず所属している
- 別途料金がかからずに質の高い遺伝カウンセリングを受けられる
- 検査後の妊娠経過についてのフォローアップが充実している
- 小児科の臨床遺伝専門医とも遺伝カウンセリングの連携が取れる体制である
認定施設のデメリット
- NIPTを受けられる妊婦に制限がある
- 費用が高い(相場は約20万円程度)
- 認定施設で検査を受けるには医師からの予約や紹介状が必要
- 遺伝カウンセリングから検査までの期間が空いてしまう
- 認定施設数自体が少なく、通院が大変な場合がある
こんな方におすすめ
メリットとデメリットをふまえた上で、以下の方に認定施設をおすすめします。
認定施設でのNIPT受診がお薦めの方
- 認定施設を受けられる条件を満たしている方
- 両親ともに時間に融通がきく・時間に余裕がある方
- NIPTに精通する医師やカウンセラーに相談に乗ってほしいという方
- NIPTで陽性が出た場合に同じ施設で確定的検査を受けたいという方
- 仮に陽性であった場合に出産後も同じ施設で小児科にかかりたいという方
NIPT(新型出生前診断)無認定施設のメリット・デメリット
無認定施設のメリット
- 希望する妊婦は誰でもNIPTが受けられる
- 費用が安い(相場は約16万円)
- 21・18・13トリソミー以外の染色体疾患も検査出来る
- 医師からの予約や紹介状が不要
- 遺伝カウンセリングとNIPTを同日に行えるところもある
無認定施設のデメリット
- 施設によって質の高さにバラつきがある
- NIPTで陽性であった場合に他院へ紹介もしくは自分で病院を探す必要性が出てくる
- NIPTの結果を知らせるのに郵送のみで終わる施設もある
- 遺伝カウンセリングを実施しない場合がある
- 特にNIPTに精通していない医師から説明や遺伝カウンセリングを受ける場合がある
こんな方におすすめ
メリットとデメリットをふまえた上で、以下のような方に無認定施設をおすすめします。
認定施設でのNIPT受診がお薦めの方
- 自分でいろいろと情報を調べて質の高い無認定施設を選べる自信のある方
- 3種類(21・18・13トリソミー)以外の染色体疾患を調べたい方
- 少しでも費用を抑えたい方
- 忙しくて検査にかける時間があまりないという方
- 認定施設で検査出来る条件は満たしてないけど、NIPTを受けたい方
無認定施設でNIPT(新型出生前診断)を受けるなら確認するべき4つのポイント
認定施設と無認定施設それぞれのメリット・デメリットをご紹介してきましたが、夫婦の考え方によってどちらがいいかは意見がわかれると思います。
NIPTを受けられる期間が決まっている中で現状の認定施設の不足をみると、一概に「認定施設でないとNIPTを受けるべきではない」とはいえません。
しかし、無認定施設の中には検査だけを実施して後は全くフォローもしない無責任とも思える施設があるのも事実です。
NIPTを受けて後悔しないためにも、無認定施設でNIPTを受けるのなら事前に電話などで確認するべき4つのポイントをお伝えします。
臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーが勤務しているか
NIPTを受ける上で遺伝カウンセリングの重要性はお伝えしていきましたが、無認定施設の中には特にNIPTに必要な専門的知識を持っていない医師がカウンセリングを行っている施設もあります。
日本産婦人科学会倫理委員会の報告では専門的知識のない医師からの説明によってNIPTについての事前説明が不十分であることや検査結果について正確に情報が提供出来ずにトラブルになった事例もあります。
質の高い遺伝カウンセリングを受けるために臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーが勤務しているかを確認しましょう。
遺伝カウンセリングの有無や費用について
そもそも無認定施設の中には遺伝カウンセリングを実施してないところもあります。
遺伝カウンセリングの重要性を考えた時に遺伝カウンセリングを実施していない施設は避けた方が無難だと思います。
また施設によっては遺伝カウンセリングに別途料金がかかるところもあります。
料金に気を取られすぎてカウンセリングに集中出来ないと元も子もありません。
遺伝カウンセリングの有無とあわせてカウンセリングにかかる費用も確認した方がよいと思います。
結果の通知方法について
認定施設は医師との対面で結果を通知するのが基本ですが、無認定施設は結果通知の方法が施設ごとに異なっています。
一番避けるべきは結果を郵送やメールのみで伝えて、特に医師からの説明がない場合です。
素人では結果だけをみて正しく情報を理解することが出来ません。
また、結果を見て新たに疑問が出てきた時に相談が出来ない可能性もあります。
最低でも医師から電話での説明があること、出来れば医師と対面で結果通知を行ってくれる施設を探すほうがよいと思います。
陽性であった場合のフォロー体制について
NIPTを受けた結果が陽性であった場合のフォロー体制も重要です。
検査結果が陽性でショックを受けて動揺している時に医師から
「ここでは確定的検査(羊水染色体検査や絨毛染色体検査)が出来ないので、自分で他の病院を探してください」
といわれた場合の心身的な負担はかなりのものと思われます。
出来れば同じ施設で確定的検査を受けられればベストですが、他院での検査でもしっかりと医師から紹介してもらえるのかは必ず確認しておきましょう。
NIPT(新型出生前診断)はどんな検査?まとめ
さて、NIPTを受けるかどうかを悩んでいる方にむけて基本的な知識から施設選びのポイントまで紹介してきました。
今回の記事の要約は以下の通りです。
NIPT(新型出生前診断)とは?まとめ
- NIPTとは胎児の染色体異常を調べる検査のこと
- NIPTを受ける最大のメリットは生まれてくる前に染色体疾患がわかり、赤ちゃんの受け入れる準備がはやく出来ること
- NIPTについて相談出来る遺伝カウンセリングがある
- 認定施設・無認定施設のどちらを受けるかは何を優先するかで決まる
- 無認定施設でNIPTをうける時は事前に確認するべき4つのポイントがある
まだ日本では倫理的な問題があることからも積極的に医師からNIPTの説明は行われていない現状があります。
しかし、親としておなかの子どものことを知りたいと思う気持ちは当たり前の感情です。
NIPTを受けたい、もしくは受けようか迷っているという方は自分の気持ちや考えを整理するためにまずは遺伝カウンセリングを予約することから始めてもいいかもしれません。
専門家によるNIPTに関する説明やカウンセリングを受けた上でしっかりと夫婦で話し合ってみてください。
夫婦で一緒に決めることが出来ればNIPTを受ける受けないに関わらず自分たちの決断に後悔することなく前を向いて進めると思います。