【専門医インタビュー】石原新菜先生|身体の発している声に、耳を澄ませて
漢方、食事療法など様々な手法を用い、西洋医学では解決しきれない不調に悩む患者の治療に当たっている石原新菜医師。
テレビ東京『主治医が見つかる診療所』など多くのTV番組に出演し、わかりやすい医学解説と笑顔が人気だ。
父は自然療法で著名な石原結實医師。そんな彼女が医師を志すきっかけは、母とのつらい別れだった。
医師を目指したきっかけは?
私の母はスイス人なんですが、長く心の病気を患っていて、私が幼い頃は、いつもつらそうにしていました。
そんな母を見る度に、少しでも楽にしてあげたいなという思いで一杯でした。
私が10歳の時、両親が離婚し、母だけスイスに戻ってしまったので、親子なのに会えない生活が始まったんです。
そして、私が17歳の時、母は他界しました。10歳の時からずっとずっと会いたかったのに……。
そんな無念さが17歳の私の心に強く刻まれました。
父が医師であること、中学時代にマザー・テレサの本に出会ったこと、生物の授業が好きだったこと……全てが医師を目指すきっかけになりましたが、一番影響されたのは母の存在ですね。
東洋医学や食事療法に力を入れている理由は?
医学部を卒業した後は、大学病院で研修の日々。
救命センター、内科外科、産婦人科、小児科、精神科と全てを回り、36時間勤務が週に3回、月の休みは1日程度という過酷な研修医時代を過ごしました。
様々な医療を経験する中で、アトピーや喘息、リウマチなどの慢性病には免疫抑制剤やステロイドで症状を抑え込む対症療法しかないということを目の当たりにしたんです。
根本的な解決じゃないと思いました。
そうなると父が今までやってきたような治療に辿り着きます。
生活習慣や食事など患者さん全体を見た上で、バランスを整えていけば、患者さんの苦しみを取り除いてあげられるのではないかという考えになったんです。
大学病院に残るという選択は?
初期研修が終わったら、任意の後期研修を経て大学院に進むつもりでしたが、研修医2年目の終盤で長女を妊娠したんです。
とても悩みましたが、大学に残るかどうかは、出産が終わってから決めようと思いました。
無事出産を終え、父のクリニックで修業を始めたところ、私が進むべき道は、やはり研究よりも臨床──目の前で苦しんでいる患者さんが元気になるお手伝いだと思ったんです。
父の下についてから丸々5年間は、一度たりとも患者さんを診察させてもらえませんでした。
父がどのように診察をし、説明し、漢方を処方するのかを、ひたすら見て学び続けました。
時々、「この患者さんには何を処方すればいいのか」と質問されて、間違えると「馬鹿野郎」と怒鳴られる──そんな修行を5年続けて、自分で患者さんを診察してもよいという許しを得ました。
自分が医師になって初めて、父の仕事に対する真剣さ、父の仕事の偉大さがわかったような気がします。
父がいなかったら私はこのような立場で診療が出来ていないはず。
親として、師匠として、本当に感謝しています。
入院中の読者にメッセージを。
私たちの身体には自然治癒力があります。
例えば、湿疹が出るのは、身体が嫌なものを外に出そうとした結果だし、下痢も同じ。
症状としては嫌かもしれないけど、身体が治そうとしてくれた結果なんです。
入院している方は、退院後の食事を考え直す、お風呂にしっかり浸かる、運動を心がけるなど、生活習慣を正して、自然治癒力をベストに近づける努力をしてみて欲しい。
生きている限り身体は常に治ろう、治そうとしてくれています。
どうか身体の発している正直な声に、耳を澄ませてみてください。それが元気への近道だと思います。
石原新菜
医師・イシハラクリニック副院長
帝京大学医学部卒業。漢方医学、食事指導により様々な病気に悩む患者の治療に当たっている。ベストセラー『病気にならない蒸し生姜健康法』をはじめ著書多数。
イシハラクリニック
イシハラクリニック公式HP