【専門医インタビュー 加藤洋一院長】感染症や夏の暑さに負けないためにがん患者が心がけることとは

新型コロナウイルスの世界的な流行を受け、2020年4月7日、緊急事態宣言が発出されました。

このウイルスは、高齢、高血圧、糖尿病、心疾患、がんのなどの患者さんでは5 倍以上の死亡率があると、中国から報告されており、皆さんも不安な思いで過ごされていることでしょう。

これから気温や湿度が上昇し、紫外線が強くなるなど、体力や免疫力が低下し易い季節がやってきます。

先端医療から生活指導まで幅広くがん患者のケアをしている新横浜かとうクリニック院長の加藤洋一医師に、がん患者が日常生活で留意する点についてアドバイスをいただきました。

非労作性熱中症にならないよう体温を測ることを習慣に

夏は暑く、健常な方でも熱中症になります。これは、高温・多湿のところで運動することが原因で起こる労作性熱中症です。

一方、抗がん剤や放射線治療中の患者さんは、自律神経のバランスが悪いため、

十分に汗が出にくく、体力が低下していることから、徐々に進行し重症化し易い非労作性熱中症になります。

熱中症の症状は、37・5℃以上の体温の上昇をはじめ、Ⅰ度で手足の痺れ、眩暈、筋肉痛、ふらつき、Ⅱ度で頭痛、吐き気、倦怠感を訴えます。

時には味覚障害・下痢も起こします。

熱中症を予防するには、自律神経のバランスを知るため、自分の体温を測定し、体温調節が出来ているかを確認すればよいのです。

もし、朝、36・0℃以下であれば交感神経の働きが弱いと思ってください。体温を作るのは、肝臓と筋肉です。

体温が低い場合、消化のよい炭水化物等を多く食べるようにして、腰や大腿の筋肉を強化するため、1日30分程度体操や散歩などの運動をしてください。

また、昼間、体温を測定し37・0℃以上あれば、汗を十分にかけていない熱中症のサインです。

スポーツドリンク500㎖をゆっくり飲み、汗が出てくるまで、日陰で休みましょう。

それでも、体温が37・0℃以上の場合は、近くのクリニックで受診しましょう。

血圧が下がることも、自律神経失調のサインです。普段の血圧より10以上下がった場合、先に紹介した体温を上げる食事と運動を行ってください。

熱中症・脱水症を予防するには尿の色や量を観察することも重要

水分は、1日40㎖/㎏以上必要です。体重50㎏の方は2ℓ必要です。

これは食事に含まれる水分も含むので、1ℓ以上は、お茶や水として飲む必要があります。

さらに体温が1℃上がると、1℃の体温を下げるために、500㎖の汗をかく必要があります。

非労作性熱中症では気がつかない間に体温が上昇し、体の水分が不足しています。

水分が不足すると、腎臓での水の再吸収が増え、尿が濃くなります。

この尿の色が濃くなることが、熱中症・脱水のサインになります。

さらに、熱中症が進むと、筋肉が溶け、溶けた筋肉が尿から排泄され、さらに尿が濃くなります。

水を十分に飲んだのに、尿が茶色という患者さんは、筋肉が溶けている重症の熱中症や脱水の可能性があります。

熱中症や脱水の予防には塩分を含む水(経口保水液)が推奨されています。

一般的には塩分は、腎臓に負担がかかり、高血圧を悪化させます。

熱中症や脱水症でない方が、経口保水液を飲むことは体に悪いということです。

尿の色が濃ければ、経口保水液・スポーツドリンクを飲みましょう。

さらに濃ければ、速やかに受診しましょう。

抗がん剤・放射線治療中は紫外線を避けたほうがよい

紫外線は、避けたほうがよいですが、骨の代謝のために日向なら15分、日陰なら30分程度、主に下腿の裏、ふくらはぎに紫外線を当てる必要があります。

それ以外の場所やそれ以上の時間になるとかえって害になります。

放射線や抗がん剤の副作用で皮膚症状がある場合、皮膚が薄く弱くなっているため、紫外線に当たると、弊害が大きくなります。

紫外線によって皮膚の真皮層が破壊されると、熱傷の跡のように治らなくなる可能性もあります。

症状が軽い場合でも、色素沈着によるシミが残ります。

医師が、日焼け止めクリームで保護するように指導することがありますが、皮膚が敏感になっているため、炎症が悪化することが多く、外出する際は長袖の上着・つばのある帽子などで紫外線を避ける方法をお勧めします。

抗がん剤の副作用や夏バテで食欲が落ち込んだら……

抗がん剤は、体力や免疫力を低下させるだけでなく、味覚障害・消化不良などで食欲も低下させます。

こんな時、私は患者さんには「味の濃いものを先に食べましょう」と指導しています。

最初に味の濃いものを食べると、弱っている味覚でも味を感じられ、消化液が分泌されるため、消化がよくなることで食べられるようになります。

夏バテで食欲が落ち込むことを予防することが大切です。

抗がん剤治療を開始するのであれば、夏になる前から、栄養補助食品を取ることをお勧めします。

ビタミン、ミネラル、アミノ酸を多く取ることで、口内・胃腸の粘膜を強くして、抗がん剤の副作用が出にくい、夏バテになりにくい体を作りましょう。

特に亜鉛とグルタミンは重要です。

もし、食欲が落ち込んだら、早めに医療機関で受診して、点滴で水分と栄養を補給しましょう。

食欲が低下すると、食事で取る水分の摂取が減少し、お通じが悪くなります。

抗がん剤は肝臓で分解され、便と尿で排泄されます。

皆さんに知って欲しいことは、抗がん剤の排泄が減ることは、その副作用が強くなるということです。

抗がん剤治療中は、食事が取れない状態を放置しないで、水分だけでも十分に取りましょう。

それでも飲食が難しい場合、私のクリニックでは抗がん剤の後にビタミンCの点滴をして、排泄を促しています。

抗がん剤治療を頑張り過ぎる前に、主治医に相談しましょう。

新型コロナウイルス対策については引き続き「3密」を避けて

新型コロナウイルスは、既往症があると重症化しやすいため、神経質になっているがん患者さんは多いと思います。

リンパ球数と重症化に関するデータが公表されています。

集中治療室に入って、人工呼吸器が必要になった患者さんのリンパ球数平均は400、肺炎症状で入院治療した患者さんのリンパ球数の平均は1000でした。

因みに健康な方のリンパ球数平均は1900あり、それに対して私のクリニックのがん患者さんは1200です。

がん細胞も新型コロナウイルスに感染した細胞も、リンパ球が攻撃します。

リンパ球が少ないことは、がんに対しても、ウイルスに対しても懸念材料です。

皆さんが血液検査を受けた際、リンパ球数が表示されていることがあるので参考にしてください。

1500以上あれば重症化しにくいと考えていいでしょう。

少ない場合、感染しないように注意が必要ですが、新型コロナウイルスは、これだけ感染力が強いのに、消毒には弱く、石鹸を使った手洗いで、十分除去出来るという性質があります。

しかし、人が触れるステンレス製やプラスチック製の表面では長時間生存し、1000分の1に減っても、感染力が残っている場合もあります。

弱さと恐ろしさと両方持っているウイルスなのです。

これらの特徴から「3密」を避けることが、がん患者さんにとって重要だといえます。

入院より通院、入院する時は大部屋より個室。

自宅でもよく触る箇所、トイレ、洗面所はこまめに手袋をして消毒することが大切です。

<取材協力>

新横浜かとうクリニック

加藤洋一 院長

【診療時間】10:00~18:00

【休診日】木曜・日曜・祝日

※事前予約が必要です

【電話番号】045-478-6180

【住所】 〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜2丁目6−13 新横浜ステーションビル 8階

【アクセス】新横浜駅(JR横浜線、東海道新幹線、横浜市営地下鉄ブルーライン)徒歩5分程度

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