世界中で大流行している新型コロナウイルス。2019年末、中国湖北省武漢周辺で感染が確認され、2020年2月には全世界に感染が拡大し、4月には全世界で感染者数が200万人、死亡者数は15万人を突破しました。

この歴史的緊急事態の中で、新薬やワクチンの開発が切望されていますが、それには長い時間がかかります。そこで期待されているのが、新型コロナウイルスに有効な既存薬の存在です。

現在、いくつかの抗ウイルス薬の名前があがっていますが、最も期待を寄せられている既存薬は「アビガン」でしょう。

中国では、すでに新型コロナウイルスに対してアビガンの有効性はある程度確認されたという報告があります。しかし、アビガンには問題点もあるのです。

この記事では、アビガンの効果や新型コロナウイルスに対する有効性、問題点などをご紹介します。

アビガンはどんな薬なの?

アビガンは、富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ薬として2014年に承認された薬です。タミフルなど既存の抗インフルエンザ薬が効かないようなインフルエンザに対して国が使用を許可した場合に限り、患者への投与が検討される薬のため、一般に流通していないので現在はまだ価格は設定されていません。

アビガンはRNAの合成を阻害する

ウイルスの増殖は、細胞内に取り込まれたウイルスがRNAを放出し(脱殻)、RNAが細胞内で複製されます(複製)。その後、複製されたRNAからできたウイルスは、細胞の外へ放出されます(遊離)。

抗ウイルス薬は、脱殻や複製、遊離のどこかの作用を阻害して、ウイルスの増殖を防いでいます。インフルエンザの治療薬として有名なタミフルは、遊離するときに作用するノイラミニダーゼという酵素の働きを阻害する薬です。

アビガンは、複製するときに作用するRNAポリメラーゼの働きを選択的に阻害することで、RNAの合成を抑制してウイルスの増殖を防いでいます。

アビガンには、他の抗ウイルス薬よりも優れている特徴があります。タミフルなどの抗ウイルス薬では、ウイルスの遺伝子が変異して、一定の割合で薬剤耐性をもつウイルスが生じます。しかし、RNAの合成を阻害するアビガンは、他の薬と違って耐性ウイルスが出現しないと考えられているのです。

アビガンの問題点は?

アビガンは、優れた効果が期待できる抗インフルエンザ薬ですが、日本では条件付きでしか承認されていません。重大な副作用が発症する可能性があるため、抗インフルエンザ薬としても、新型または他の治療薬が無効なケースに限り使用の検討をする、という条件があるのです。

アビガンには催奇形性の可能性がある!

催奇形性とは、妊娠の時期に服用すると、胎児に奇形が生じる可能性があることです。過去に、抗多発性骨髄腫薬や神経性胃炎薬として用いられた「サリドマイド」を服用した妊婦から、手足に異常がある奇形児が生まれてきて世界中で問題となったことがあります。

アビガンは動物実験の段階で、奇形の子どもや胎児の死亡が認められたため、催奇形性が指摘されています。人間が服用しても催奇形性があるのか、服用後、催奇形性のリスクがどのぐらいの期間続くのかもよくわかっていません。そのため、優れた効果が期待できるアビガンですが、現在まで日本で広く使用されることはなかったのです。

アビガンは新型コロナウイルスの治療薬になり得るのか?

アビガンが新型コロナウイルスの治療薬として世界中で注目され始めたのは、中国で実際に新型コロナウイルス感染者にアビガンが使用されて、効果が認められたという報告があったからです。

中国で行ったランダム化比較試験によると、アビガンを投与した患者の71%で回復がみられ、対照群の56%より高かったことが発表されました。また、解熱期間もアビガンを投与した患者では2.5日だったのに対し対照群では4.2日、咳が治まるまでの期間はアビガン投与患者が4.6日だったのに対し対照群は6.0日といずれの場合でもアビガンを投与した患者の方が回復が早かったことが公表されています。

アビガンは、以前新型コロナウイルスと同じRNAウイルスの感染症であるエボラ出血熱で効果が認められたこともあり、大きな期待が寄せられています。

日本では6月末にはアビガンは承認される!?

アビガンには、催奇形性の問題はありますが、現状では新型コロナウイルスの治療に有効である可能性が最も高い薬であることは間違いないでしょう。

日本では、抗インフルエンザ薬としてすでに承認されていたため、3月末から臨床試験の最終ステップである第3相臨床試験が始められました。第3相臨床試験は、6月末には終了する見込みであるといわれています。すでに、アビガンを使用して回復された方の声がネット上で確認することもできます。

また、アメリカでも4月中旬から第2相の臨床試験を始めると発表がありました。その他、ドイツなどでもアビガンの使用を始めるといわれています。

日本では、臨床試験終了後は希望者へアビガンの投与を出来るだけ拡大させるため、備蓄量を200万人分まで拡大することや、インドネシアやイランなど20ヵ国へ無償提供をすることが発表されました。

早期発見、早期治療が有効になる

現在、新型コロナウイルスに感染していることを早期発見しても、有効な治療薬がないため感染拡大予防という点以外ではあまり意味がありません。しかし、アビガンが新型コロナウイルス感染に効果があるとわかれば、早期発見し服用すれば重症化することを抑えることが期待できます。特に、重症化しやすい高齢者にとって有効な薬となるでしょう。

現在、日本では医療崩壊を防ぐ意味でも、PCR検査は濃厚接触者や、新型コロナウイルスの感染が強く疑われる症状が現れている人しか受けることはできませんが、アビガンの有効性が明らかになったら検査を受けられる基準も変わる可能性があります。

アビガンの服用には慎重になる必要がある

アビガンが新型コロナウイルスの治療に有効であると認められたとしても、催奇形性の問題は解決していません。アビガンが抗インフルエンザ薬として承認されている日本において、広く使用されたことがなく、どのような影響が現れるかは不明なのです。

そのため、これから妊娠を希望している若いひとは特にアビガン服用のリスクを理解して、服用するかを慎重に考える必要があります。

アビガンの新型コロナウイルスに対する有効性だけではなく安全性も確認されること、新型コロナウイルスのワクチンや新薬が開発されることを願っています。

まとめ

・現在、新型コロナウイルスの治療に最も期待が寄せられている既存薬は、抗ウイルス薬として承認されているアビガン

・アビガンは、RNAの合成を阻害することでウイルスの増殖を抑制する薬で、耐性ウイルスが生じないと考えられている

・アビガンを服用すると催奇形性の副作用がある可能性があるため、抗インフルエンザ薬として条件付きで承認されている

・中国では、アビガンが新型コロナウイルスに有効である報告があり、日本でも服用して回復した方の声がすでにある

・日本では新型コロナウイルスに対するアビガンの第3相の臨床試験が行われていて、6月末には終了する予定である

・アビガンの有効性が確認されたら早期治療が可能になるが、使用のリスクを理解して服用するかを慎重に考える必要がある

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