HIVやエイズという言葉を聞いたことがあっても、どんな病気か知っている人は少ないのではないでしょうか?

ただ漠然としたマイナスイメージから、あまりいい印象を持っていないという人は多いと思います。

HIVやエイズはその病気や予防方法について知っておくことで、多くの人が持つ偏見から見方を変えることが可能です。

そこでこの記事では、「HIVやエイズについて」「免疫に与える影響」や、「感染経路」から「予防方法・治療」などをご紹介します。

免疫に影響を与えるエイズ。詳しい免疫のしくみについては、こちらをご覧下さい。

⇒「

">免疫のしくみとは?免疫力の生活との関りについても

HIVについて知ることで、自分だけでなく周囲の予防につながるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

エイズやHIVって何?

多くの人は、なんとなくエイズやHIVは同じものであると思っているのではないでしょうか。

しかしエイズとHIVは、明確に違いがあります。そこでここでは、HIVとエイズについて比較していきます。

  • HIVとは?

HIVとは「ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)」のことです。

つまりウイルスのことであり、病気ではありません。

このウイルスは、人の免疫に関与するTリンパ球やマクロファージ(免疫細胞)に感染し病気を引き起こします。(*1-2)

HIVはⅠ型とⅡ型の2種類があり、HIVに感染した場合を総称して「HIV感染症」といいます。

  • エイズとは?

エイズ(AIDS)とは「後天性免疫不全症候群」のことをいいます。(*2-1)

HIVがTリンパ球やマクロファージに感染し、適切な治療が施されなければ日和見感染や悪性腫瘍を引き起こす状態です。(*2-2)

日和見感染とは、「普段感染しないような細菌やウイルスにも感染しやすくなっている」ことを指します。

つまりエイズはHIVのようなウイルスではなく、「病気」のことです。

エイズはこのような状態を指す病気で、主に23の疾患を発症した時点で診断されます。(*1-3)

このように、HIVとは「エイズの原因となるウイルス」であり、エイズは「HIVに感染して発症する病気」という違いがあります。

治らない病気って本当?罹ると必ず亡くなるの?

治らない、不治の病であるとの印象が強いエイズ。必ず亡くなってしまう、と思っている人も少なくありません。

しかしHIVに感染しても近年治療薬が進化しており、早期発見して治療を行えば通常の生活を送ることもできます。(*2-3)

今では症状をコントロールすることで上手に付き合って行くことが可能で、必ず亡くなる病気ではありません。

しかし今の医療では、身体に入って感染してしまったHIVというウイルスを全て取り除くことはできないのです。(*3-1)

つまり治らない病気であるということになります。

しかし上記でも説明した通り、薬を飲むことで妊娠・出産も行えるなど普通の生活が可能です。

ですがHIV感染後エイズを発症すると、発症前より治療が難しくなります。(*3-2)

発症までの期間が長いHIVは、なにより早期発見し治療していくことが大事です。

発症までの期間については、下記項目で解説していきます。

免疫のどこに影響を与える病気?

免疫とは、細菌やウイルスなどから身体を守るしくみのことです。

詳しい免疫については上記でも紹介した、こちらの記事をご覧ください。

HIVは、免疫で重要な役割を担うTリンパ球の「CD4リンパ球」に感染します。(*4-1)

CD4リンパ球は白血球のリンパ球に属するTリンパ球の中の一つです。

HIVがCD4リンパ球に感染すると、CD4リンパ球を破壊し数を減らします。

免疫では司令塔のような役割を担うCD4リンパ球。この免疫細胞が数年をかけて破壊されることで、免疫機能が破綻するのです。(*4-2)

免疫が破綻すると「免疫不全」という状態になり、細菌やウイルスなどの病原体から身体を守ることができません。

そのため通常は感染しないような感染症に罹ってしまい(日和見感染)、エイズを発症します。

エイズを発症したからといって、死ぬわけではありません。しかし通常より免疫力が低下しているため、重症化するリスクが高いです。

そのため、エイズを発症する前の早期発見が治療に重要となります。

HIVに感染してからエイズを発症するまで

日本でも未だに感染者が報告されているHIV。HIVは感染してから、エイズを発症するまで数年期間があるといわれています。

発症までの経過は以下の通りです。(*3-3)

  1. HIVに感染する
    HIV感染後、数週間したらインフルエンザのような症状があらわれる。あるいは無症状の場合も。
  2. 無症状の数年間
    自覚症状がなく数年が過ぎる。その間も身体の免疫力は徐々に低下する。
  3. エイズを発症
    日和見感染で、エイズと診断される指標となる疾患を発症することでエイズ発症となる。

「エイズの指標となる23疾患」(厚生労働省より)(*5)

  1. カンジダ症
  2. クリプトコッカス症
  3. コクシジオイデス症
  4. ヒストプラズマ症
  5. ニューモシスチス肺炎
  6. トキソプラズマ脳症
  7. クリプトスポリジウム症
  8. イソスポラ症
  9. 化膿性細菌感染症
  10. サルモネラ菌血症
  11. 活動性結核
  12. 非結核性抗酸菌症
  13. サイトメガロウイルス感染症
  14. 単純ヘルペスウイルス感染症
  15. 進行性多巣性白質脳症
  16. カポジ肉腫
  17. 原発性脳リンパ腫
  18. 非ホジキンリンパ腫
  19. 浸潤性子宮頸がん
  20. 反復性肺炎
  21. リンパ性間質性肺炎
  22. HIV脳症
  23. HIV消耗性症候群

病気がうつる感染経路とは

性感染症というイメージの強い「HIV」。しかし性行為だけで感染するわけではありません。

HIVの感染経路には主に、「性行為感染」「血液感染」「母子感染」の3つになります。

ここでは、詳しい感染経路について解説していきます。

  • 性行為感染
    最も一般的で多い感染経路は、「性行為」です。HIVは血液や精液などに多いため、性行為を行うことでうつります。(*4-3)
  • 血液感染
    血液に多いHIVは、感染者の血液を介して感染することもあります。血液を輸血したり注射器の使いまわしでの感染も。昔は献血された血液での感染例もありましたが、現在はほとんど感染しません。
  • 母子感染
    HIVに感染している母親から生まれた乳児は、出産時に感染していることがあります。また母乳からの感染例も。(*4-4)しかし治療薬やミルクを使うことで、感染率をおさえることが可能です。

このように、血液や粘液などによる感染が主です。

本来HIVは感染力が強くないため、普通の生活で感染することはありません。

HIVを調べるためには

HIVを調べるにはHIV検査しかありません。HIV検査は、各都道府県の保健所で無料で受けることができます!

ほとんどの保健所では、無料さらに匿名で検査可能です。(*1-3)

検査で名前が分かってしまうと、誰かに知られそうで検査したくないという人もいますよね。

そういう場合は、保健所に連絡し検査を行ってください。検査は即日結果が出る場合もあります。

HIVは早期発見が重要な病気。検査できる方法を知り、予防や早期発見につなげましょう。

「不安な場合はまず検査を」ということを忘れずに、ぜひ参考にしてみてください。

治療方法について

紹介したように、HIVは完治する病気ではありません。

そのため基本的に、ウイルスの増殖を抑える薬を内服する治療が行われます。

抗HIV薬といわれる複数の薬を併用して内服し、ウイルスの増殖を抑える治療がメインです。(*1-4)

「ウイルスの増殖を抑える」ため、できるだけ早く内服治療を行うことが必要になります。早く始めれば始めるだけ、効果が期待できるのです。

抗HIV薬の内服を行えば、健常者と変わらない生活を送ることができ寿命もほとんど変わらないといわれています。

また服薬していればHIVの量を抑えることができ、他人を感染させる確率を低くすることにもつながります。

つまり内服治療を適切に行えば、怯えて生活する必要はほとんどないウイルス・病気です。

日常生活でできる予防方法

日常生活でHIVに感染するのは、ほとんどが性行為です。そのため感染防止には、「コンドーム」が効果的といえます。

HIVは血液や精液に多いため、これらが粘膜や傷口などにつかないようにコンドームを着用しましょう。

コンドームはHIV以外にも、性感染症のリスクを軽減することにつながります。

オーラルセックスの場合も、口の粘膜から感染するリスクがあります。(*1-5)ですので、オーラルセックスを行う際もコンドームの着用が必要です。

性行為でコンドームを付けることは、自分や相手の身体を守ることにつながります。

男女ともにマナーとして、コンドームの使用を心がけるようにしてください。

HIVについて知り予防を心がけよう!

  • エイズやHIVとは?:HIVとはウイルスのことで、HIVによって指標の疾患を発症(日和見感染)した状態をエイズという。
  • 免疫に与える影響とは?:CD4リンパ球にHIVが感染することで、免疫不全に陥る。免疫不全になると、通常かからない感染症にかかってしまう。
  • 日常生活でできる予防:性行為での感染は、コンドームで予防することが可能。オーラルセックスの場合も着用が必要。

これらについて知っておくことで、HIVについて理解を深めることができます。HIVは今や死なない病気です。無暗に恐れるのではなく、不安な場合は検査して早期発見できるようにしましょう。またこの記事を参考に、HIVの感染予防につなげてください。

「看護師 油谷 美久」

(*1)HIV検査相談マップ「HIV・エイズって何?」
https://www.hivkensa.com/mb/whatis/
(*2)国立感染症研究所「AIDS(後天性免疫不全症候群)とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/400-aids-intro.html
(*3)政府広報オンライン「ストップエイズ!今は「不治の特別な病」ではなく、コントロール可能な気です。まずは早めに「HIV検査」を」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201305/2.html
(*4)中四国エイズセンター「HIV/AIDSとは」
https://aids-chushi.or.jp/ippan/
(*5)厚生労働省「9 後天性免疫不全症候群」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-07.html