メディアでしばしば取り上げられる活性酸素

動脈硬化をはじめとして、様々な健康問題に関わっているといわれていますが一体何なのでしょうか。

そもそも活性酸素とは何かについての理解から始め、活性酸素の有害な作用を減らすための生活習慣の解説までしていきます。

酸素とは何か?

活性酸素という言葉の中には、酸素という言葉が入っていますね。

活性酸素の前に、まずは酸素の説明から始めたいと思います。酸素は私たちの生命活動には必須の存在です。大気中には21%の酸素が含まれており、人間をはじめとして多くの生物が酸素を取り込んで利用しています。

しかし、原初の地球環境には酸素はほとんど存在せず、そのころ誕生した微生物も酸素を使わずに生命活動を行っていました。そうした微生物は今でも存在します。

ではなぜいま大気中に酸素があふれているかというと、いまからおよそ30億年前、大気中の二酸化炭素を使って光合成をする生物が現れたためです。こうした生物の活動によって地球上の酸素濃度が高まるにつれ、酸素を利用した生命活動ができる生物が生まれます。

酸素を用いた生命活動は、そうでないものよりも効率がよく、これがのちに現在につながる植物や動物などの生物多様性を生むきっかけとなりました。

実は生命に有害でもある酸素

酸素は、生物の進化、果ては人間にとって非常に重要で有益なものではあるのですが、良い面ばかりではありません。

実は、酸素は有害でもあるのです。

たとえば病院で人工呼吸器による治療中、長時間の高濃度酸素によって肺組織が損傷するため、病状に応じて適切な酸素濃度に下げていくことの重要性を指導されます。どうして、生命活動に必須の酸素が人体に悪影響を及ぼすのでしょうか。

その原因が活性酸素なのです。

活性酸素とは何か?

ここでようやく活性酸素が登場しました。

私たちが生命活動で利用する酸素は、細胞内で利用される過程で活性酸素を生じます。これは、酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称です。人間をはじめとした哺乳類の場合、取り込んだ酸素の数パーセントが活性酸素になるといわれています。

この活性酸素は、常に生成されており、細胞内のDNAを損傷します。つまり、活性酸素は、何か外部からやってくる毒物などではなく、私たちの酸素を使った生命活動の過程で、どうしても出てしまうものなのです。

活性酸素の有益なはたらき

とはいえ、単純に活性酸素は有害と言い切ることもできません。長い進化の過程で、生命は活性酸素ですら活用できるようになってきました。

たとえば、白血球から産生される活性酸素は、免疫機能や感染防御の役割を担っています。つまり、活性酸素を使って、病原菌を除去しているのです。また細胞間のシグナル伝達、排卵、受精、細胞の分化・アポトーシスなど生命活動を助ける極めて重要な役割を果たしているのです。

もし、生体から完全に活性酸素を除去してしまうと、私たちの生命活動自体が成り立たなくなってしまいます。

活性酸素と老化や病気の関係

生命にとって重要なはたらきをしている活性酸素ですが、だからといって有害な作用を無視してよいわけではありません。

生体内で発生した過剰な活性酸素は、DNAを損傷するだけでなく、たんぱく質を変性させたり、酵素をはたらかなくさせたり、脂質を酸化させたりします。

こうした作用によって、動脈硬化が進み、心疾患や脳血管疾患の原因となります。また、DNAの損傷が蓄積されたり、酵素のはたらきが阻害されたりすることでがん細胞が増殖する原因ともなります。

総じてこうした活性酸素による生体へのダメージの蓄積が、老化の進行や病気の発生の原因となっているのです。

生命が備えている抗酸化作用

生命にとって毒性と有益なはたらきの両面を持っている活性酸素ですが、生命は、良い面を活用しつつ、悪い面をコントロールする能力を身につけています。それが抗酸化作用です。

最近では、活性酸素の害と同時に抗酸化作用の重要さがクローズアップされ、抗酸化作用の高い食品の広告が目につきます。しかしながら、元々生命には、活性酸素によって引き起こされる細胞の損傷から身を守るための抗酸化防御機構が備わっているのです。

繰り返しになりますが、過剰な活性酸素は細胞を障害し、最近ではがんや心血管疾患、生活習慣病などの病気の原因になることが明らかになっています。しかし元々生命は活性酸素の毒性を認識していますから、抗酸化防御機構をはたらかせ、活性酸素の産生を抑制し、生じたダメージの修復・再生を促します。

毎日一つの細胞から10億個と言われる活性酸素が生成され、DNAや組織が傷つけられていますが、生体内の抗酸化防御機構は常にこのダメージを修復しているのです。この抗酸化防御機構ではたらいているのが、生体内のいくつかの酵素です。また、私たちが摂取する食物の中に含まれるビタミンCやビタミンE、ポリフェノールといった抗酸化物質も同様のはたらきをしています。

活性酸素と抗酸化作用のバランスが大切

健康な状態であれば、私たちの体内で活性酸素の産生と抗酸化防御機構のバランスを取ることができます。

一方で、活性酸素の産生が過剰になったり、抗酸化防御機構のはたらきが低下したりしてバランスが崩れた状態は酸化ストレスといいます。そのため、活性酸素による健康問題を考える際には、酸化ストレスを減らすという視点が大切です。

酸化ストレスを減らす生活習慣

酸化ストレスを引き起こすリスク因子としては、タバコ、紫外線、放射線、大気汚染、薬剤、酸化された物質の摂取などが考えられます。また、過度の運動やストレスも活性酸素の産生を促し、酸化ストレスを引き起こす要因となります。

こうした酸化ストレスを増大させる外的要因を減らすことが、活性酸素による有害な影響を減らす上で大切なことです。同時に抗酸化防御機構が正常に働くように促すことも大切です。日常的にバランスの取れた食事、適度な運動習慣、十分な睡眠を心がけることで体内の抗酸化力を維持・向上させることができるでしょう。

私たちの周りでは、様々な健康問題が取り上げられ、それらに対して、あれを食べたらいい、これをしたらいいと色々な情報が提供されます。しかし、実際のところ、何か特定のことをしたら絶対大丈夫というものはありません。今回取り上げた活性酸素がもたらす有害な作用は広く健康に影響を与えるものですが、特効薬はまだありません。

このようなことは、私たちを不安にさせますが、一見地味な生活習慣の改善を少しずつ積み重ね、継続していくことこそが、結果的に様々な健康問題に対応できる方法なのではないでしょうか。

一度に全部の生活習慣を変えるのは難しいですし、不安はストレスの元となって酸化ストレスを増大しかねません。まずはタバコを止めてみようとか、夜は早めに眠るようにしようとか少しずつ取り組み始め、小さな達成感を繰り返して習慣化していくのがよいと思います。

このように少しずつ楽しみながら取り組んでいき、ともに健康をめざしましょう!

看護師 古川正造

参考文献

活性酸素と酸化ストレス,eヘルスネット,厚生労働省,

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html,2020/3/16閲覧

吉川敏一,フリーラジカルの医学,京都医大誌,120(6),381-391,2011,

http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/120/120-6/yoshikawa06.pdf

酸化ストレス,健康長寿ネット,

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/sanka-sutoresu.html,2020/3/16閲覧

活性酸素,Wikipedia,https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%BB%E6%80%A7%E9%85%B8%E7%B4%A0,2020/3/16閲覧

酸化ストレス,Wikipedia,https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%B8%E5%8C%96%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9,2020/3/16閲覧

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