食品の重要な健康成分の一つとしてメディアでも取り上げられることの多いポリフェノール。炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、無機物の5大栄養素に加え、食物繊維に次ぐ栄養素として7大栄養素のひとつに挙げられるほどです。

ポリフェノールには高い抗酸化作用があり、心臓病や脳卒中を予防する効果もあると注目されています。

今回は、多岐にわたる効果を示しているポリフェノールとは、そもそもどのようなものなのか、多様な効果、最新の研究動向などについて紹介していきます。この記事を読むことで、ポリフェノールに対する理解が深まり、普段の食生活により効果的に取り入れることができるようになります。

ポリフェノールとは?

ポリフェノールは、ベンゼン環に複数の水酸基(-OH)が結合した化合物の総称で、天然物だけでも8,000種類以上存在します。古くからその存在は認知されていましたが、1990年代以降、急速に報告論文が増加しています。

 「フレンチ・パラドックス」として有名な仮説をご存じでしょうか。フランス人の一人当たりの肉消費量は世界のトップクラスであり、ワイン消費量も非常に高い状況にあります。過度の肉食や飲酒は健康にマイナスと考えられますが、フランス人は他の西欧諸国と比較して心臓病による死亡率が低いのです。この要因の一つが赤ワインの中に含まれるポリフェノールによるものではないかというものです。

 1991年に、この理論がアメリカのテレビ番組で放送された後、ワインの消費量が44%も増加したともいわれています。

 こうしたメディアの影響は日本でもみられ、ワインやカカオにポリフェノールを多く含んでおり、健康によいというイメージが広がっています。日本では、医学的・栄養学的な観点から、ポリフェノールの健康維持・増進機能の研究も活発に行われてきました。特定保健用食品や機能性表示食品として70種類以上もの成分が商品化されています。

ポリフェノールの効果

ポリフェノールの効果として、よく知られているのは強い抗酸化作用です。

同様の効果をもつビタミンCやビタミンEは、食品の酸化防止剤としても使われています。抗酸化作用によって体内の活性酸素が除去され、老化や病気を予防できるとされています。活性酸素は、体内で日常的に生成されており、特にケガや病気による炎症、タバコ、紫外線などによっても生成されます。抗酸化作用によって、体内で発生した活性酸素を除去し、細胞や組織の損傷を防ぐことができます。ポリフェノールを日常的に摂取することによって、こうした活性酸素の害を防ぐことが期待できます。

その他の効果として、

●高血圧や脂質異常の改善

●インスリン感受性の改善

●抗炎症作用

●抗アレルギー作用

●骨粗しょう症予防作用

●筋萎縮予防作用

●視力回復作用

●認知機能維持作用

など多種多様な効果が認められています。

その中でも、お茶や紅茶、ココア、チョコレート、イチゴ、リンゴ、タマネギ、赤ワインなどのポリフェノールを多く含む食品を頻繁に摂取することにより、心筋梗塞や心不全、脳卒中などの心血管疾患のリスクを下げるというエビデンスの高い疫学研究も報告されています。

作用メカニズムや適量は未解明

このように、疫学研究では、ポリフェノールの効果は明らかになってきていますが、なぜそのような効果を示すのか、体内でどのように働いているのかについてのメカニズムは解明しきれていません。というのも、摂取されたポリフェノールの多くは消化の過程で分解され、元の構造を維持できないからです。また、ポリフェノールの中には、体内に吸収されにくいものも存在します。それにも関わらず、有用な効果が得られているため、「ポリフェノール・パラドックス」ともいわれています。

また、ラットに対して経口からの摂取では不可能な多量のポリフェノールを投与した結果、効果が発現しなかったという研究報告もあり、ポリフェノールをどの程度摂取するのが効果的なのかについても十分明らかになってはいません。

いずれにしても、多くの研究者がポリフェノールの作用メカニズム解明のために研究をしており、今後、より効果的な用量や成分が明らかにされていくことが期待されています。

ポリフェノールの代表的な成分と食品

ポリフェノールには8000種類以上あると述べましたが、私たちが普段摂取している食品となじみの深い代表的なポリフェノールの成分を紹介していきます。

●カテキン

お茶の渋み成分として知られています。老化や病気の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用が強く、コレステロールを下げる効果もあるため動脈硬化予防効果が期待されます。

●アントシアニン

イチゴやブルーベリーなどに多く含まれ、視力維持、老眼予防などの効果があるといわれています。

●カカオポリフェノール

ココアやチョコレートに多く含まれ、高血圧改善、動脈硬化予防、抗アレルギー作用、美肌効果などがいわれています。

●ルチン

ソバなどに含まれ、脳卒中予防に効果があるといわれています。

●クルクミン

ウコンの主要な機能性成分として知られており、アルコールによる肝障害を予防する効果があるとされています。

●イソフラボン

大豆に含まれ、女性ホルモンに似た働きをすることから、女性ホルモン減少に伴って起こるほてりやめまいなどの更年期障害を緩和するといわれています。

●クロロゲン酸

コーヒーに多く含まれ、高い抗酸化作用だけでなく、脂肪消費量を増やし、内臓脂肪を減らす効果があるとされています。また、日本人のポリフェノール摂取の47%がコーヒーによるものとする報告もあります。

●ショウガオール

名前の通りショウガに多く含まれるポリフェノールで、強い抗酸化作用があり、がんや動脈硬化、老化などの予防効果があるとされています。また、消化吸収の促進や血行促進作用により代謝を改善する効果も報告されています。

●プロシアニジン

りんごのポリフェノールといわれるほど、りんごに多く含まれるポリフェノールです。他にはココアや黒豆、ナッツなどに多く含まれます。プロシアニジンも、高い抗酸化作用があるといわれています。

●フェラル酸

植物の細胞壁に多く含まれる成分で、酸化防止剤としても使用されています。美肌効果や高血圧の改善、最近では、脳細胞保護作用からアルツハイマー型認知症の予防効果も期待されています。

おわりに

ポリフェノールはワインやカカオなど特定の食品だけに含有されているわけではなく、植物全般、つまり量の過多はありますが、野菜や果物全般に含まれています。

日本人が古来愛飲してきた緑茶にもカテキンというポリフェノールが多く含まれていますし、コーヒーや紅茶にも含まれています。

当たり前のことですが、カカオポリフェノールを摂取するために、チョコレートばかり食べていれば、脂質や糖質の取りすぎになるかもしれませんし、赤ワインばかり飲んでいてはアルコール障害の原因になるかもしれません。

野菜や果物、お茶といった食品はポリフェノール以外にも、豊富な食物繊維やビタミンなど様々な健康維持作用のある栄養素が含まれていますので、こうした食品を積極的に摂りながら、嗜好品としてカカオや赤ワインなども摂取していくのが現段階でのバランスのよいポリフェノールの摂取方法といえるでしょう。

もちろん、今後の研究でポリフェノールの作用メカニズムが明らかになっていくことで、効果的な摂取方法も明らかになっていく可能性は十分ありますので、期待したいですね。

参考文献

ポリフェノールの種類と効果と摂取量,健康長寿ネット, https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/polyphenol.html,2012/3/11閲覧

Fukushima Y et al, Coffee and beverages are the major contributors to polyphenol consumption from food and beverages in Japanese middle-aged women, J Nutr Sci. 2014;3:e48.

越阪部 奈緒美, ポリフェノールパラドックス生体利用性と機能性の矛盾, Kagaku to Seibutsu 54(10): 726-731 (2016)

看護師 古川正造

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