
「子宮頸がんについて詳しく知りたい」
「子宮頸がんの予防などについても知りたい」
この記事はそんな方々に向けて書かれています。
子宮頸がんは女性特有のがんで若い女性に多く発症しているということを聞いたことがあるかもしれません。
また、予防接種についてたびたび議論になっていたりして関心がある人も多いのではないでしょうか?
この記事を通してみなさんの子宮頸がんへの理解が深まれば幸いです。
子宮頸がんとは?
子宮頸部(入り口)に発生する悪性腫瘍で、女性生殖器のがんの中では子宮体がんに次いで2番目に頻度は高いようです。
多産婦に多く、また若年者にも多いのが特徴です。
25〜34歳の女性の浸潤がんの中では乳がんについで2番目に多いです。
好発は30〜40歳代です。
また、年間約3000人の方が子宮頸がんで亡くなられています。
子宮頸がんの症状
感染初期にはほとんど症状がないことも特徴です。
がんになる前の数年間、異形成という状態で進行します。
がんを発症すると月経中ではない時の性交渉時に性器から出血したり、茶色の膿のようなものが出てきたり、水っぽいおりものが増えたりします。
またさらに進行した場合、腹部や腰部に痛みがあったり、血尿、血便が出ることがあります。
これらの症状に少しでも心当たりがあったら病院を受診する方が良いでしょう。
子宮頸がんの原因
子宮頸がんの原因はほとんどの場合、ヒトパピローマウィルス(HPV)に持続的に感染することです。
ヒトパピローマウィルス(HPV)
HPVは様々な型(種類)があるウィルスです。
現在180以上の型が存在し、そのうち15の型が子宮頸がんの発生に関与していることが知られています。
そのうち16型や18型などの感染は子宮頸がん発症のリスクが特に高いことで知られています。
感染経路は主に性交渉によるものです。
性交渉の経験がある女性の約8割が50歳までに感染する可能性があるようです。
ただし感染しても7割が1年以内に、9割が2年以内に消失するようです。
そのため持続感染しなければがんになることはありません。
HPVが感染後、数年うちに消失してしまうことはその型のHPVに対する抵抗力すなわち免疫が準備されにくいということでもあります。
したがって、同じ型のHPVに複数回感染してしまうこともあります。
また、がんのハイリスクとなるHPVは他に中咽頭がん、肛門がん、膣がん、陰茎がんの発生にも関与しているようです。
HPVによる他の疾患
HPVによる子宮頸がん以外の疾患には尖圭コンジローマや尋常性疣贅があります。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマはHPV6型または11型などによって発症する性感染症です。
この2種のHPVががんを引き起こす可能性は低いです。
尖圭コンジローマは性交渉後3週間から8ヶ月あたりに好発します。
外陰部、会陰、肛門周囲に先の尖った無痛性のイボができることが特徴です。
外陰部に痒みが出ることもあります。
治療にはイミキモドという薬剤を外用するかイボを切除する方法や冷凍療法、電気焼灼法、レーザー蒸散法などがあります。
尋常性疣贅
尋常性疣贅の発症にはHPV2型または4型などが関与しています。
これらの型もがんを引き起こす可能性は低いです。
尋常性疣贅は皮膚にできた微細な傷にHPVが感染することで発症します。
発症は感染後3〜6ヶ月後あたりのことが多いようです。
手や足に無痛性のイボができることが特徴です。
感染部位を触ったてで他の部位を触ると感染が広がるので注意が必要です。
治療は冷凍療法や電気焼灼法がありますが、治療には複数回の通院が必要になる可能性が高いです。
子宮頸がんの予防法
上述しましたが子宮頸がんの原因のほとんどがHPV感染によるものです。
ですから予防法としては感染をいかに防ぐかが鍵となってきます。
感染を予防する方法として「子宮頸がん予防ワクチン」の接種が挙げられます。
また「子宮頸がん検診」を定期的に受けることでHPVによる細胞の異形成や早期の子宮頸がんを発見することができます。
子宮頸がんワクチン
子宮頸がんワクチンは平成25年に定期接種化されましたが、接種後に様々な症状が報告されたため積極勧奨は中止されています。
しかし、これらの症状の原因が子宮頸がんワクチンであるとする科学的根拠は証明されていません。
むしろ早期に子宮頸がんワクチン接種プログラムを導入した国々ではHPV感染率の劇的な減少が確認されているようです。
近年、日本においても接種世代のHPV感染率減少が報告されています。
そのため子宮頸がんワクチンを積極的に接種する方が良いと考えられます。
日本で認可されているワクチンには「サーバリックス」と「ガーダシル」の2種類があります。
これまでこの2つのワクチンはHPV 16型、18型の感染やそれによる細胞の異形成を90%予防したとも考えられているようです。
すでに感染しているHPVの抑制や排除には効果がないため、感染する前に接種することが望ましいです。
接種形態には定期接種と任意摂取が存在し定期接種は無料、任意摂取は1回1〜2万で受けることができます。
定期接種は中学1年生相当の女子(小学校6年〜高校1年生相当)、任意接種はそれ以外(9〜10歳以上)の女性が受けることができます。
サーバリックス
サーバリックスはHPV 16型および18型による子宮頸がんに効果を発揮します。
3回の接種が必要です。
1回目の接種の1ヶ月後に2回目を、6ヶ月後に3回目の接種を行います。
ガーダシル
ガーダシルはHPV6、11、16、18型に効果を発揮します。
このワクチンは上述の尖圭コンジローマにも効果があります。
ガーダシルもサーバリックスを同様、3回の摂取が必要です。
1回目の接種の2ヶ月後に2回目の接種を、6ヶ月後に3回目の接種を行います。
子宮頸がんワクチンの定期/任意接種
子宮頸がん検診
子宮頸がんワクチンは子宮頸がんの予防には大変効果的であることは述べましたが、サーバリックスとガーダシルは効果のあるHPVの型が決まっているため、HPVのその他の型に対応することができません。
そのため子宮頸がん検診を受診することでさらに予防効果を高めることができます。
子宮頸がん検診の内容は主に「細胞診」をすることです。
細胞診とは細胞を採ってきて顕微鏡で異常な細胞がないか検査することです。
子宮頸がん検診では先にブラシのついた専用の器具を用いて細胞を採取します。
この検査で異常があった場合はさらに精密検査を受けることになります。
精密検査ではコルポスコープという膣を拡大する器具を使い詳しく検査します。
その時に子宮頸部の組織の一部を採取して顕微鏡で組織に不正がないかチェックする「組織診」を行います。
子宮頸がん検診の対象年齢は20歳以上の症状のない女性で2年に1度定期的に受診することが推奨されています。
子宮頸がんの治療法
子宮頸がんは早期発見がされれば他のがんに比べ比較的治療のしやすいがんだと考えられています。
しかし、他のがん同様進行すれば治療も難しくなっていきます。
子宮頸がんの治療法としては主に手術療法と放射線療法が行われています。
進行例では、化学療法も併用されます。
治療法の選択は、年齢、進行期、組織型、合併症の有無を総合的に判断されます。
臨床進行期はⅠ期からⅣ期までの4つに分類されます。
それでは、臨床進行期の定義や選択される治療法を解説していきます。
Ⅰ期
Ⅰ期はがんが子宮頸部に限局する状態です。
Ⅰ期の頻度は53.5%で5年生存率は92.2%となっています。
Ⅰ期で選択される治療法には円錐手術、単純子宮全摘術、広汎子宮全摘出術、骨盤リンパ節郭清、放射線治療、同時化学放射線療法などがあります。
手術や放射線治療の詳細は後述いたします。
Ⅱ期
Ⅱ期はがんが子宮頸部を超えて広がっているが骨盤壁または膣壁下1/3には達していない状態です。
Ⅱ期の頻度は23.2%で5年生存率は77.0%です。
Ⅱ期で選択される治療法には広汎子宮全摘出術、放射線療法、同時化学放射線療法などがあります。
Ⅲ期
Ⅲ期は浸潤がんが骨盤壁まで達するもので、腫瘍塊と骨盤壁との間にcancer free spaceを残さない状態、または膣壁浸潤が下1/3に達する状態です。
Ⅲ期の頻度は11.8%で5年生存率は55.9%です。
Ⅲ期で選択される治療法は同時化学放射線療法などです。
Ⅳ期
Ⅳ期はがんが小骨盤腔を超えて広がるか、膀胱、直腸の粘膜を侵している状態です。
Ⅳ期の頻度は11.5%で5年生存率は27.5%です。
Ⅳ期で選択される治療法は同時化学放射線療法、化学療法、放射線療法などです。
続けてそれぞれの治療法について紹介していきます。
円錐切除
子宮の頸部を円錐状に切除する手術です。
画像の検査だけでは判断しづらい場合の検査目的のみで行われることがあります。
単純子宮全摘出術
子宮の頸部の周りの組織は残して子宮だけを摘出する手術です。
お腹を切る開腹手術以外にも膣から切除する膣式手術などが存在します。
がんの浸潤範囲によって準広汎子宮全摘、広汎子宮全摘といった方法を選択する場合もあります。
骨盤リンパ節郭清
手術の際にがんだけでなく、がん周辺のリンパ節を切除する手術です。
がん細胞はリンパ節を通って全身に転移する性質があるからです。
リンパ節郭清度は、術前の臨床所見、術中の所見、リンパ節転移の有無と腫瘍の深達度で決定します。
リンパ節郭清後、体内のリンパの流れが滞ることで手足のむくみが出ることがあります。
放射線療法
子宮頸がんの組織型の75%は扁平上皮がんと言われています。
放射線は扁平上皮がんに高い治療効果を発揮するため、子宮頸がんには有用です。
膣内や子宮内腔から放射線を当てる腔内照射や体外からの外部照射で効率よくがん細胞を消滅させることができます。
卵巣機能の温存のため照射野外に卵巣を移動させ固定することもあるようです。
化学療法
いわゆる抗がん剤治療です。
複数の薬剤を併用することが多いです。
化学療法はがん細胞だけでなく正常細胞にも影響を与えるために脱毛や易感染性などの副作用が存在します。
同時化学放射線療法
放射線単独で根治が難しい場合、化学療法も同時に行う治療法です。
同時に行うことで治療効果を高め、予後の改善が期待できます。
まとめ
子宮頸がんとは→ヒトパピローマウィルス(HPV)によって発症する女性特有のがんです。多産婦や若年者に多く発症します。毎年3000人以上が亡くなっています。
子宮頸がんの予防法→ワクチンと検診を受けることです。特にワクチンによって子宮頸がんの発症に強く関与しているHPV 16型、18型の感染を防ぐことができます。ワクチンには様々な副反応があるとしばしば報道されていますが、科学的・疫学的根拠はありません。ワクチンは接種するようにしましょう。
いかがでしたか?
以上、子宮頸がんについて解説してきました。
この記事を通して、皆さんの子宮頸がんの理解が深まれば幸いです。