
一般的に身近な予防接種といえばインフルエンザワクチンだと思いますが、
実はワクチンにはとても多くの種類があることを知っていますか?
日本では予防接種法が定められており、
法律に基づいた予防接種が行われています。
インフルエンザの予防接種は、毎年接種する、しないの選択が個人で可能ですが、
それとは別に、
赤ちゃんの頃から受ける必要がある予防接種や、
65歳以上が接種するよう推奨される予防接種、
海外渡航する人が必要とする予防接種等があります。
そもそも、予防接種のワクチンはどうして受ける必要があるのでしょうか。
予防接種の目的
予防接種とは、病気に対する免疫をつけるためにワクチンを接種することです。
ワクチンを接種することで、あらかじめ病原体に対する免疫の抵抗力を作り出します。
ワクチンを接種する事で、
病気にかかることを予防したり、
社会で病気が蔓延することを防いだり、
もしその病気にかかったとしても重症化や後遺症を防ぐことが出来るのです。
予防接種の種類
予防接種には、制度の違いとして定期接種と任意接種の2つがあります。
定期接種とは、国が予防接種法に基づいて行う予防接種です。
さらに、定期接種の中でも集団感染を防ぐ目的で接種するA類と、個人の予防目的で接種するB類に分類されます。
定期接種
A類:接種の努力義務が法律で定められており、居住する自治体の病院であれば市町村の公費で接種ができる(無償)。接種することが勧奨される。集団感染予防。
- ヒブワクチン
- 小児用肺炎球菌ワクチン
- B型肝炎ワクチン
- 4種混合ワクチン(ジフテリア/百日咳/破傷風/ポリオの4種類)
- BCG(結核)
- MRワクチン(麻しん/風疹)
- 水痘ワクチン
- 日本脳炎ワクチン
- ※HPVワクチン(子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス感染症)※HPVワクチンは、定期接種ではあるものの現在接種勧奨を一時取り辞めている。
B類:努力義務や接種勧奨は無いが、個人の感染予防に有用。
自己負担(一部地域では補助金あり)
- 季節性のインフルエンザ
- 高齢者の肺炎球菌感染症
任意接種とは、国が使用することを認めているものの、予防接種法での規定はなされていない予防接種です。
任意接種:法規定は無く、原則的に料金は自己負担(一部自治体では補助あり)です。
任意接種といえど、日本小児科学会が推奨するワクチンも含まれています。
日本小児科学会が推奨する任意接種:ロタウイルス、おたふくかぜ、インフルエンザ
※ロタウイルスは、2020年10月1日から定期接種に変更予定
また、それ以外にも以下の任意接種があります。
・A型肝炎ワクチン
・髄膜炎球菌ワクチン
・黄熱ワクチン
・狂犬病ワクチン
・23価肺炎球菌多糖体等ワクチン
これらは、海外渡航の際に必要とされる場合や、持病で免疫力が低下しており医師が必要と判断した場合に接種されるケースが多いです。
定期接種A類と一部の任意接種については、日本小児科学会が生後2ヶ月〜学童期に摂取すべき予防接種について推奨するスケジュールが整備されており、自治体から予防接種を順に受けるよう問診票が渡され、ワクチンを受けたかどうかは母子手帳で記録されることになっています。
また、身近なインフルエンザは定期接種B類に分類されているため努力義務はありませんが、医療や介護の現場では感染予防のため職員全員が接種を求められる事もあります。
ワクチンの種類
ワクチンは、その成分と効果による違いから
生ワクチン、不活化ワクチンに分類されています。
生ワクチン
生きた病原体となるウイルスや細菌を弱めて(弱毒化)病原性を無くしたワクチンです。
弱められた病原体が体内で増え、免疫力をつけます。
そのため、軽い感染症状が出ることがあります。
麻しん、風しん(MR混合)、水痘、結核(BCG)、おたふくかぜ(ムンプス)、ロタウイルスなど
不活化ワクチン
病原体の感染する能力を失わせた(不活化)ワクチンです。
生ワクチンに比べ、獲得する免疫力が弱いため、数回にわたって接種する必要があります。
インフルエンザ、B型肝炎、ヒブ感染症、小児肺炎球菌感染症、百日咳、ポリオ、日本脳炎、狂犬病など
生ワクチンであれば3週間、不活化ワクチンであれば1週間、副反応に注意が必要です。
また、別のワクチンを摂取したい場合、生ワクチンは4週間以上、不活化ワクチンは1週間以上間隔を空ける必要があります。
気になる副反応!出やすい症状と接種前の注意
副反応とは、ワクチン接種で病気への免疫を付けること以外の反応が起こる事を指します。
よく起こる副反応は、接種部位の腫れ、赤み、痛み、しこり、発熱等です。
これらの副反応は、比較的高い頻度(数%〜数十%)で出現します。
通常は数日以内に治まることが殆どですので、様子を見て問題ありません。
ですが、稀にアナフィラキシー(アレルギー反応)、急性脳炎、けいれん等の重い副反応が起こることもあります。
副反応を避けるための、接種前の健康確認
こういった副反応を可能な限り避けるため、予防接種前にはワクチン専用の問診票を記入します。
明らかな発熱(37.5度以上)がある人は予防接種を受けることが出来ません。
また、過去にワクチンでアナフィラキシーを起こしたことがある人は、ワクチン接種に医師の個別判断が必要となります。
ワクチン接種が出来ないこともあるので、必ず申告しましょう。
また、予防接種を受けるにあたって、以下に当てはまる方は医師とよく相談が必要です。
- 心臓病、腎臓病、肝臓病、血液の病気がある人
- 薬剤アレルギーがある人
- けいれんを起こしたことがある人
- 免疫疾患を指摘されたことがある人(家族が免疫疾患を有している人)
- 妊娠の可能性がある人
- 気管支喘息の既往がある人
ちなみに、卵アレルギーがある人であっても以下の卵の成分を含むワクチンは基本的に接種可能です。
インフルエンザワクチンや、MR混合ワクチン(麻しん/風しん)、ムンプスワクチン(おたふくかぜ)
ですが、卵によってアナフィラキシーによる全身症状を起こしたことがある場合は、医師との相談の上、接種を推奨されないこともあります。
副反応や、それによる有害事象が起こった場合の対応
予防接種によって重い有害事象が起こった場合、
医師は行政に健康被害の報告が義務づけられており、
その健康被害が接種を受けたものであると認定されれば、
医療費やその後の障害年金、万が一亡くなられた場合は死亡一時金などが支払われます。
この救済制度は、定期接種と任意接種で窓口が異なります。
定期接種:予防接種法に基づいて対応
任意接種:医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医薬品副作用救済制度による対応
接種後の過ごし方
予防接種を受けた後30分間は、急激な副反応(特にけいれん、アナフィラキシー等)が起きないか注意しましょう。
また、接種部位は清潔に保ちましょう。
当日の激しい運動も控えることが必要です。
まとめ
- 予防接種には定期接種と任意接種の2つがある
- ワクチンの種類には、生ワクチンと不活化ワクチンがある
- 副反応は、局所の腫れや痒み、発赤、しこり、発熱など軽い症状であることが多い
- 稀に重篤なアナフィラキシーやけいれん、脳炎などのリスクもある
- 予防接種を受ける際は健康状態を万全に
- 有害事象に対しては医師と行政が対応し救済制度を取り入れている
- 自分自身と社会、他者を守るためにワクチンは必要
予防接種の際に、ワクチン接種の同意書を読むと、副反応のリスクについて不安を感じることがあると思います。
ワクチンは効かない、自然に免疫を獲得すべき、など病気と免疫に関する認識の誤りによって
予防接種を打たないという選択をする方も一部いらっしゃいます。
ですが、予防接種によって出現する副反応は局所症状や発熱など軽症であることがほとんどで、アナフィラキシーショックや脳炎、けいれん等の有害事象はとても稀です。
予防接種を打たずに病気に感染してしまうと重症化したり、後遺症が残るなど、その後の人生を大きく左右してしまいます。
また、多くの人が予防接種を受けることで社会で感染を拡大させないことに繋がります。
そしてそれが、免疫疾患などの持病やアレルギー、妊娠によってワクチンを打つことができない人を感染から守ることにもつながります。
予防接種の作用と必要性を正しく理解し、自分だけでなく社会にとっての健康も守ることが大切です。