感染症は病原体が何らかの経路を介して人に伝播しますが、その経路は病原体の種類・病気の種類によって異なります。

今回は【感染症の感染経路の種類】と【感染経路別の感染予防方法】についてお伝えしていきます。

感染経路の種類

感染症を生じる病原体の感染経路は大きく、空気感染、飛沫感染、接触感染とその他(母子感染など)に分けられます。

これらの経路を介して、主に鼻やのどなどの粘膜に付着したり、疾患によっては体液や血液に混ざることによって感染症を発症します。

空気感染とは

別名飛沫核感染とも言います。

「飛沫核」とは、病原体を保有している感染者から咳やくしゃみ等により放出される「しぶき」(飛沫)から水分が蒸発し核だけになったものです。

大体のウイルスや細菌などの病原体は、水分を失うと感染力を失うのですが、結核菌、麻疹ウイルス、水痘ウイルスは飛沫核だけになっても強い感染力を保持したまま空気中を漂います。

飛沫核は5μm以下と小さく、水分を含まないため空気中を浮遊して長時間、広範囲に感染します。

空気感染では感染者と直接接触していなくても、同じ空間に居るだけで感染してしまうリスクがあるのです。

空気感染では空気中を舞う飛沫核だけでなく、病原体を含むほこりなど(乾燥した吐物や糞便など)を吸い込むことによっても感染する可能性があります。

他の感染経路と比べ、広範囲、大人数への感染のリスクの大きいのが特徴です。

また、飛沫核は小さいため気道粘膜の線毛運動を通過してしまい肺まで到達してしまうため一般的なマスクでは予防効果はあまりありません。

〈空気感染する感染症〉

結核、麻疹、水痘

飛沫感染とは

病原体を保有する感染者のくしゃみや、咳による「しぶき」のことを飛沫と言い。

その飛沫が感染者の近くに居る人の気道粘膜や鼻粘膜などに付着することにより感染します。

飛沫は微生物などの病原体を中心に周囲が水分で囲まれており、その大きさは、5μm以上です。水分を含み、大きく重たいため、すぐに地面に落下します。飛沫の飛ぶ距離は1m程度(※1)であるため、通常空気感染のように病原体が長く空気中を舞うことはありません。

〈飛沫感染する感染症〉

インフルエンザ、風疹、百日咳、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)など

SARSやMERS、今回の新型コロナウイルスなどの原因であるコロナウイルスの感染経路も主にはこの飛沫感染と言われており、風邪を引き起こすような多くの菌やウイルスはこの飛沫感染が経路であることが多いと考えられています。

接触感染とは

感染者と直接または間接的に接触することによって感染する経路です。

直接的接触感染では、経口感染、粘膜感染、性行為感染が挙げられます。

経口感染では、病原体に汚染された食べ物を食べたり、糞便が手指を介して口に入ってしまう場合に起こります。

粘膜感染では感染者の血液や分泌物などが粘膜に付着することで感染し、性行為感染では感染者との性行為で感染します。

間接的接触感染では、感染者と接触した医療者などの手や物、ドアノブや手すりなどを介して非感染者に感染することを言います。

医療現場での感染での最も多い感染経路です。薬の効かない薬剤耐性菌などがこの経路を介して感染します。

〈接触感染する感染症〉

薬剤耐性菌(MRSA.ESBLなど)、ロタウイルス・ノロウイルスなどの感染性胃腸炎、流行性結膜炎、疥癬、性感染症(梅毒、風疹、エイズなど)、新型コロナウイルス感染症 など

その他の感染経路

母子感染

病原体が母体から胎児もしくは乳児に感染する経路で、胎盤感染、産道感染、母乳感染が挙げられます。

標準予防策と感染経路別の予防方法

感染経路の種類に関わらず、感染症を予防するための基本は「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」です。感染経路別の予防方法はこの標準予防策に加えて行います。

標準予防策とは

全ての人が病原体を保有している可能性があると考えて手指消毒を行い、病原体が含まれていると考えられる物質(血液・体液・粘膜など)に接近する場合には防護具を用いることです。

医療現場での感染予防策の基本ですが、日常生活でも感染予防のためには重要な予防策です。

標準予防策の基本は、手指衛生(手洗い・アルコール消毒)、防護具(マスクや手袋など)の使用、環境と物の管理です。環境の管理とは普段の生活で言えば換気や加湿、定期的な清掃などで、物の管理は感染リスクのある物を洗浄・消毒することです。

中でも手指衛生と、マスクの装着は基本中の基本です。

特に感染症の流行する時期には標準予防策を意識して生活しましょう。

※手洗いのポイント

帰宅後、食事や調理の前には必ず手を洗いましょう。

ハンドソープを使用して30秒以上揉み洗いし流水で流します。ハンドソープでの手洗いを2回繰り返すことで、より確実にウイルス・菌を除去することができます。(※2)

感染経路別の予防方法

空気感染

空気感染を予防するためには、一般的に市販されているサージカルマスクでは飛沫核が通過してしまうため、あまり効果がありません。飛沫核のような微粒子も通過しない作りになっている「N95微粒子用マスク」を使用すれば、病原体を持つ感染者と接触しても予防することができます。

飛沫感染

標準予防策で予防することができます。特に、マスクを正しく装着すれば飛沫を吸入することが防げるため感染のリスクは低くなります。

インフルエンザ流行時など飛沫感染する感染症の流行している時には、外出時はマスクを着用することをお薦めします。

自身が感染している、または感染している恐れがある場合にも、飛沫が拡散し他の人へ感染してしまうことを予防するためにもマスクを着用しましょう。

接触感染

標準予防策実施の上、感染している人と接触する場合には手袋やエプロンを使用し、感染者やの触れた物・場所などの病原体の付着していると思われる物は、アルコール消毒もしくは次亜塩素酸ナトリウムにより消毒をします。(ウイルス、細菌の種類により異なります)

ノロウイルスやロタウイルスでは、吐物や糞便が病原体となります。感染が疑われる場合、吐物や糞便の処理は注意が必要です。

感染予防のために大切なこと

標準予防策や感染経路別の予防方法を実施することは感染経路を遮断し、感染症を発症させないために重要です。

しかし、一番確実なのは病原体に触れるリスクを減らすことです。感染症が流行している時期には、人混みは避け、不要不急の外出は控えることで感染リスクを低く抑えることができます。

しかし、仕事や買い物など、全く外出せず家にこもっておく、というわけにはいきませんよね。

外出時にはマスクを着用し、こまめに手洗いを行ないましょう。

病原体がもし、体内に侵入してしまっても、免疫力が高ければ、発症を免れることができることもあります。

免疫力の向上には、十分な睡眠と栄養が重要となります。予防策を徹底するだけでなく、自身の体のケアも怠らないようにしていきましょう。

まとめ

・感染症の感染経路は主に、空気感染、飛沫感染、接触感染。

・感染症予防のためには、感染経路別に対応することがポイント。

・しかし、感染予防の基本は「手洗い」と「マスク」。

・体の免疫力を高めておくことも大切。

※1: World Health Organization:Natural ventilation for infection control in health-care settings. Atkinson J, et al, eds. WHO Publication/Guidelines, 2009.

※2:森功継他 感染症学雑誌、80:496-500,200 Norovirus の代替指標として Feline Calicivirus を用いた 手洗いによるウイルス除去効果の検討

参考ページ

日本感染環境学会 感染経路別予防策

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