
医療技術の進歩もあり脳血管疾患で死亡する人は、以前に比べると減少傾向にあります。しかし、脳血管疾患は後遺症が残ることが多く、本人ばかりでなく家族など周りの人にも大きな負担をかけてしまいます。
そのため、脳血管疾患のリスクを知りたい方は多いですが、本人で気づくことは非常に難しいといえるでしょう。そこで注目されているのが脳ドックです。
脳ドックという言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。脳ドックは、脳血管疾患のリスクを見つけて適切な治療や対策をすることで、脳血管疾患の発症予防や進行抑制を目的としています。
この記事では、脳ドックの検査内容やわかること、受診をおすすめする人、クリニック選びの方法などをご紹介します。脳ドックに少しでも興味がある方は是非参考にしてください。
脳ドックの検査内容は?何がわかるの?
脳ドックの検査は施設によってさまざまですが、基本的な検査は頭部MRI、頭部・頸部MRA、頸動脈エコーです。それぞれの検査でわかることをご紹介します。
頭部MRI:MRI装置で頭部の断層を撮影して、脳梗塞や脳腫瘍などのリスクや早期発見ができます。
頭部MRA:頭部の血管を立体的に映し出すことで、血管の状態を知ることが出来ます。脳動脈の狭窄や拡張、脳動脈瘤の発見などに有効な検査です。
頸動脈エコー:超音波を使って、脳に血液を送る頸動脈の動脈硬化の状態を知ることができます。頸動脈の状態は、将来の脳血管疾患のリスクを予測するために重要です。
MRIとMRA、エコーは放射線を用いていないため、被爆する心配はありません。MRIとMRAの検査時間は30分程度かかります。MRIとMRAは狭い装置に入り検査中は大きな音がするため、気分が悪くなったらインターホンなどで伝えましょう。
脳ドックではこれらの検査の他に、血液検査や尿検査、頭部CT、眼底検査、頸椎X線直接撮影などが行われています。認知症のリスクがわかる検査をしてくれる施設もあります。
脳ドックを受ける前に医師に伝えた方が良い事は?
MRIやMRAは磁気を使って検査するため、心臓ペースメーカーやプレート、クリップなど体内に金属が存在する方は医師に伝えましょう。
また、妊娠中や妊娠している可能性がある方、入れ墨をしている方は検査を受けられない可能性があるので医師に相談してください。
MRIとMRAは狭い装置の中に30分程度入って受ける検査のため、閉所恐怖症の方は医師に相談し指示を受けましょう。
脳ドックを受けた方が良い人とは?
脳血管疾患の発症リスクが増え始める40歳以上の方は、脳ドックを1度は受けた方が良いと思いますが、特に受けた方が良い人をご紹介します。
自分に当てはまる項目があった場合は、医師に相談し、脳ドックの受診を考えてみてください。
・家族に脳血管疾患を患ったことがある人がいる
・健康診断で高血圧・脂質異常・高血糖の指摘を受けたことがある人
・肥満
・飲酒・喫煙している人
・日常生活で過度のストレスを感じている人
・偏った食生活を送っている人や塩分摂取量が多い人
・頭痛持ちの人
該当している項目がなかった方でも、脳血管疾患を発症した場合のリスクを考えると、今まで1度も脳ドックを受診したことがない40歳以上の方は受診をおすすめします。
脳ドックって保険使えるの?安く検査をしてもらう方法は?
脳ドックを受けたいと思っているけど、保険が使えるかわからないし、保険が使えなかったら高額な検査費用がかかるかもしれない、という理由で踏み出せない方も多いでしょう。
ここでは多くの方が気になっている脳ドックの料金についてご紹介します。
脳ドックは健康保険が使えません!
脳ドックには健康保険は使えません。検査にかかる費用は、全額患者負担となります。脳ドックは病気治療のための検査ではなく、予防を目的とした検査だからです。
費用は検査内容によって異なっていますが、2~5万円ぐらいで行っているクリニックが多いです。多くのクリニックは、検査内容の異なる複数のコースがあります。
どのコースを受ければよいのか自分では判断できない方は、医師に相談してから決めるのがよいでしょう。
受診頻度は2~3年に1回程度なので、この検査で脳血管疾患のリスク管理が行えると考えば決して高い料金ではないと思えるのではないでしょうか。
出来るだけ安い費用で脳ドックを受けるには?
脳ドックと人間ドックやがん検診とのセットコースを設定しているクリニックがあります。セットコースでは、単独で脳ドックを受診するよりも安い料金設定がされている場合がほとんどです。
人間ドックを定期的に受診していない方は、人間ドックと脳ドックをセットで受診すれば、自分の全身の状態を知ることができるため、受診を検討してもよいのではないでしょうか。
保険を利用して脳の検査を受ける方法は?
脳ドックは、まだ症状を感じていない方が自分の状態を知り、予防するために受けるものです。そのため保険を利用することはできません。
しかし、少しでも症状を感じたのなら脳神経外科に行けば、脳ドックではありませんが医師の判断で保険を使って適切な脳の検査を受けることができます。
短時間の頭痛やめまい、しびれなどちょっとしたことが脳血管疾患の前兆かもしれないので、少しでも異変を感じたら脳神経外科に行って検査をしてもらうようにしましょう。
脳ドックを受けるクリニックの選び方は?
脳ドックを受けるクリニック選びに、悩まれている方も多いのではないでしょうか。受診施設の選び方は、日本脳ドック認定施設、検査内容と費用などから判断するとよいでしょう。
日本脳ドック学会は、さまざまな条件から脳ドックを受診するに相応しい施設を認定しています。認定施設で脳ドックを受診することをおすすめします。
認定施設以外では、頭部MRI、頭部・頸部MRA、頸部エコー、血液検査、尿検査、生化学検査、心電図、認知機能検査、血圧測定など日本脳ドック学会が推奨している検査が含まれている施設かも参考になります。
料金は安いに越したことはありませんが、施設選びの最優先事項で安さを考えるのはやめた方がよいです。常勤している専門医の存在や検査内容をクリアしている施設の中から、料金が安い施設を選びましょう。
まとめ
・脳ドックを受診すると、脳梗塞や脳内出血などの脳血管疾患や認知症のリスクを知ることができる
・動脈硬化のリスク因子が多い人や高齢者は脳ドックを受診した方がよい
・脳ドックにかかる費用は健康保険が使えず全額自己負担ですが、人間ドックなどとのセットコースで受けると少し安くなる場合がある
・脳ドックを受診する施設の選び方は、日本脳ドック学会認定施設と検査内容、料金などから判断する