「不妊の原因にはどんなものがあるの?」

「不妊って男性も関係あるの?」

という疑問をお持ちの方に、向けて本記事は書かれています。

不妊とは、妊娠を希望している男女が避妊せずに性交渉を行って、一年経過しても妊娠しない場合のことをいいます。

不妊なんて自分には関係ないと思われる方も多いでしょうが、なんと現在生殖可能年齢カップルの15%が不妊と言われています。

ですので不妊は決して他人事ではありません。

この記事を読むことで不妊は身近な問題であるということを認識してもらい、不妊に対する理解を深めていただければ幸いです。

不妊の原因と治療

不妊診療の開始が女性であることが多いため女性側が原因として取り上げられがちですが、実際は不妊に悩むカップルの5割弱は男性側に原因があるようです。

現在、「不妊の3大因子」とされているのは、「排卵因子」、「卵管因子」、「男性不妊因子」とされています。

「排卵因子」と「卵管因子」は女性側に原因がありますが、「男性不妊因子」は男性側の問題です。

つまり、不妊は女性だけの問題ではないのです。

また、2017年3月の日本医事新報の「男性不妊の原因と治療の現状」では「不妊に悩むカップルの48%は男性に原因があるが、その情報の理解が、患者、婦人科医、生殖医療専門家医以外の泌尿器科医の間で深まっているとは言いがたい。」と述べられています。

したがって、不妊の原因や検査について理解するには男女両方の視点から考えていく必要があります。

男性側に原因がある場合

今回は、不妊の原因は半数男性側あることを読者の皆様に認識して頂くために、あえて男性側の原因から紹介していこうと思います。

男性不妊の主な原因は、造精機能障害、性機能障害、閉塞性精路障害です。

造成機能障害

造精機能障害は男性不妊患者の8割を占めます。

造精機能障害とは何らかの原因で精子を作る機能に問題がある場合のことを言います。

主な原因に特発性と精巣静脈瘤があります。

特発性

造成機能障害の半数は原因不明の特発性です。

精索静脈瘤

精巣静脈瘤とは精巣から心臓に戻る血液が静脈(蔓状静脈叢)の中で逆流してしまい、瘤(こぶ)のようになってしまうことです。

精索静脈瘤は精巣の周囲に血液がうっ滞すること血液の温度が上昇したり、低酸素状態になります。この状態が続けば精子形成異常や静止運動率低下を引き起こします。

治療は手術を行うことです。

射精機能障害

性機能障害には主に射精障害とE D(Erectile Dysfunction)があります。

射精障害

射精障害とは勃起は問題なくできるが、正常に射精することができないことを言います。

射精障害には膣内射精障害、逆行性射精などがあります。

膣内射精障害

マスターベーションでは射精できるが性交では射精できない状態のことです。

男性が性交時に男性器にかかる膣の圧力を超える力で男性器を握ったり、床や布団に擦り付けたりなど誤った方法でマスターベーションを行うことが原因です。

治療はマスターベーションの方法を変更するか早期の挙児を希望する場合は排卵日前後3日間はマスターベーションで採取した精液をシリンジで膣に入れる方法があります。

逆行性射精

逆行性射精は内尿道口が適切に閉じないために、射精時に精液が膀胱の方に流れてしまう状態です。

射精感はありますが精液量が減少し射精後の尿が精液で混濁します。

原因の多くは神経系の問題ですが、糖尿病が原因になることもあります。また、薬剤が原因になることもあります。

治療は、内尿道口を適切に閉じるためのアモキサピンという薬や神経系を回復させるビタミンB 12を服用します。糖尿病が元疾患である場合は糖尿病の治療を優先的に行います。薬剤性の場合は対象の薬の服用を中止します。膀胱内に射精したせいしを回収して人工授精や体外受精を行う場合もあります。

ED(Erectile Dysfunction)

EDとは勃起障害のことです。勃起を十分に行うことができないため性交渉をすることができません。原因には身体に問題のない機能性と問題のある器質性があります。

機能性

勃起機能に異常はないが何らかの心理的要因で勃起機能に障害がある状態です。

心理的要因には、罪悪感、親密性に対する恐怖、抑うつ、不安、ストレスなどがあり、特定の場所、時間、パートナーなどが関係する状況に応じて生じます。

器質性

器質的要因には血管疾患や神経疾患があり、しばしば動脈硬化や糖尿病に起因します。血管疾患の要因で一番多いのは陰茎海綿体の動脈硬化で、喫煙や糖尿病が起因することが多いです。神経疾患は脳卒中や、多発性硬化症などに起因しますが、頻度が高いのは糖尿病性神経障害と外科的損傷です。

機能性、器質性EDともに原疾患がある場合はそちらの治療を優先させます。

また、全例において患者のカウンセリングを行い安心させることも重要です。

治療の第一選択薬としてホスホジエステラーゼ阻害薬の服用を選択する医師は多いです。ホスホジエステラーゼ阻害薬は陰茎の血管を拡張させ、血液の流入を引き起こし勃起を促進します。

その他の治療には、勃起障害の補助器具として絞扼リングの使用があります。勃起した陰茎の基部にリングをはめることで早期の勃起消失を防ぐ働きがあります。

EDについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

閉塞性精路障害

閉塞性精路障害とは、精子を作る能力には問題がないが、精路(精子の通り道)が閉塞、細くなったりすることで射精液中に精子を出すことができない状態です。

閉塞する箇所は精管、精巣上体、射精菅の3つが挙げられます。

閉塞性精路障害は精巣上体炎やYoung症候群などの疾患に要因があったり、パイプカットや幼少期のヘルニア術後に引き起こされることがあります。

閉塞性精路障害は、精子は作られていて精路が詰まっている状態ですから、詰まっているところを開通すれば精子を高い確率で回収することができます。そのため治療は、精路の再建術・開通術となります。これは精管同士をつなぎ直したり、精管と精巣上体をつないだりする手術です。

女性側に原因がある場合

女性不妊の主な原因排卵障害、卵管障害、子宮着床障害です。

排卵障害

排卵障害は、3大不妊因子のひとつで、女性が自力で排卵できない状態のことです。

排卵は視床下部、脳下垂体、卵巣が連動して初めて起こります。

排卵障害はこのどこかに異常が起きて引き起こされることが多いです。

以下は代表的な原因疾患です。

神経性無食欲症(視床下部性)

いわゆる「拒食症」です。心理的、社会的要因によって生じる精神障害です。性腺刺激ホルモンや甲状腺機能低下、強いストレスによる視床下部への影響で無月経に陥ります。

治療は身体面と心理面両方に行います。ある程度の体重回復後に、認知の歪みを修正し、対人関係スキルやコーピングスキル向上を目指します。

高プロラクチン血症(下垂体性)

プロラクチンは下垂体から分泌されるホルモンの一つです。乳汁分泌ホルモンと言われています。授乳期に多く分泌されますが、授乳中でない場合にこのホルモンが多く分泌されると排卵障害を引き起こすことがあります。

治療は原因によって様々です。下垂体に腫瘍がある場合ならば、ドパミン作動薬という薬や手術療法を行います。視床下部に障害がある場合もドパミン作動薬を使います。薬剤性ならば、服用の中止や薬の変更などを行い、甲状腺機能低下症ならば甲状腺ホルモンを投与します。

多嚢胞性卵巣症候群(卵巣性)

多嚢胞性卵巣症候群とは卵胞の発育が抑制されていて発育するのに時間がかかる状態です。なかなか排卵しないため、月経異常や不妊を伴います。

挙児希望の治療はクロミフェンという薬を用いて排卵誘発を引き起こすものが第一選択となっていますが、BMIが25以上である場合はまず減量することが必要です。

卵管障害

卵管障害は3大不妊因子の一つで、受精卵が卵管を通って子宮まで行くことができない状態です。

主な卵管障害の原因に卵管閉塞、卵管癒着があります。

卵管閉塞

卵管閉塞とは何らかの原因で卵管が閉塞して疎通性が失われてしまっている状態です。卵管が両側とも閉塞してしまう場合には自然妊娠は望めません。原因はクラミジア感染症によるものがほとんどです。その他にも子宮内膜症などでも卵管閉塞が起こります。

治療として挙げられるものはFTカテーテルなどを使って卵管を直接開通させる方法や体外受精です。

卵管癒着

卵管の周囲が癒着している状態です。卵巣から排出された卵子は自然に卵管の中に入るわけではなく、卵管采という卵管の先端にある部分が卵子をキャッチして卵管に入ります。卵管が癒着していると卵子が取り込めなくなり受精率が低下したり、受精しても着床しない可能性が高くなります。原因はクラミジアなどの感染症や子宮内膜症です。

治療は卵管閉塞と同様にFTカテーテル法や体外受精があります。

子宮着床障害

子宮に異常があり受精卵が着床しづらい状態です。

代表的な原因疾患に子宮筋腫があります。

子宮筋腫

子宮筋腫は婦人科の中で最も多い疾患です。子宮の筋肉に良性腫瘍が発生し、発生部位が子宮内腔に近くなればなるほど不妊になる可能性が高くなります。原因は不明ですが、女性ホルモンであるエストロゲンの作用によって腫瘍が大きくなります。

閉経後縮小していくため自覚症状のない方は治療の必要はありませんが、主な治療法に薬物療法と手術療法があります。

薬物療法では反復投与により下垂体機能を抑制するGnRHアゴニストという薬を用います。GnRHアゴニストには皮下注射薬でリュープリン、スプレキュア、点鼻薬でスプレキュアがあります。加えてGnRHアンタゴニスト(受容体拮抗薬)のレルミナという薬の内服が2019年に保険収載されました。

しかし、薬物治療では筋腫は縮小しするだけで完全になくなるわけではありませんし、休薬すればまた増大します。したがって、挙児希望の方は腫瘍だけを切除する筋腫核出手術を選択することがほとんどです。

不妊の検査

ここまで不妊の原因と個別の治療法について紹介してきましたが、不妊の検査方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

ここでも男性と女性の検査を分けて紹介していきます。

男性側の検査

精液検査

マスターベーションで採取した精液を検査します。精液検査では、精子濃度、運動率、携帯などを調べます。異常がある場合には病気がないか、泌尿器科で検査します。

女性側の検査

基礎体温

基礎体温を毎朝一定の時間に測ることで、排卵の有無、排卵日の予測、黄体機能不全の有無、不正出血の原因などが分かります。

経膣超音波検査

子宮筋腫やクラミジア感染などの疾患がないか調べます。子宮筋腫などの疑いがある場合には、MRIや腹腔鏡による検査を追加します。

血液検査

エストロゲンなどの女性ホルモンや甲状腺の機能について血液検査を行います。

頸管粘液検査

頸管粘液の量と透明度を観察した後、牽引性を見ます。頸管粘液の量が少ない場合や、濁っている場合、粘稠性が高い場合には精子が子宮内に侵入することができません。

子宮卵管造影

卵管の閉塞や癒着、子宮の中に携い帯異常がないか調べます。

成功後試験(フーナーテスト)

排卵日頃に性交を行い、翌日に子宮頸管粘液を採取しその中の精子の運動について調べます。直進運動精子の数に異常があれば、女性の免疫因子について検査します。

一般不妊治療

検査に異常がなかったり、不妊に原因となる疾患を治療しても妊娠に至らない場合は、一般的不妊治療に移行します。

一般不妊治療の流れは、タイミング法→排卵誘発法→人工授精→体外受精です。

数周期で妊娠しない場合、次の治療法へステップアップすることが多いですが、序盤のスッテプを飛ばして治療を行うこともあります。

では、順に解説していきましょう。

タイミング法

最初に用いられる治療方法です。

基礎体温や尿中のホルモンで排卵日を特定し、2日前頃、最も妊娠しやすいと言われている時期に性交を行ってもらい自然妊娠を目指す方法です。

排卵誘発法

排卵誘発法にはクロミフェンという薬を服用するかhMG/rFSHという物質を注射、またはその併用があります。

これらは、排卵障害に使用する方法でもあるが、排卵があっても、人工授精の妊娠率向上のために使用することもあります。

人工授精

人工授精は先述のフーナーテストが良くない場合や性交障害がある場合、精子に不妊の原因があると考えられる場合に行われます。

精液から運動率の高い良好な精子を取り出して、妊娠しやすい時期にカテーテルなどで子宮内に注入する方法です。

精子の補助を行っていますが、過程としては自然妊娠と同じです。

体外受精

体外受精はタイミング法や人工授精で妊娠できなかった場合のステップアップや体外受精でないと妊娠できないと判断された場合に行われます。

体外受精でないと妊娠できないと判断されるのは精子、卵管ともに原因があること場合などが挙げられます。

流れは以下の通りです。

卵巣を刺激して排卵を誘発させる→採卵・採精→受精→培養液で「胚(細胞分裂を開始した受精卵)」を培養→子宮内に胚移植→黄体ホルモンを数回に渡り補充→妊娠判定

人工授精と混同されることが多いですが、プロセスは全く異なります。

まとめ

・不妊の原因は様々。原因がわからないこともある。

・不妊の原因の半数は男性側に原因がある。その認識はまだまだ浸透していない。不妊は全ての人に関与することだと理解する必要がある。

いかがでしたか?

以上、不妊について解説してきました。

かなり長文になりましたがまだ解説しきれていないことがたくさんあります。

例えば、男女とも年齢が上がるにつれて不妊率も上昇することなどです。

ぜひこの記事を通して不妊に対する理解を深めていただけると幸いです。

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