皆さんは「ピル」と聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか。内服する事がないため男性には避妊薬としてのイメージが強いかもしれません。また、女性薬学生を対象に「ピル」の知識とイメージについて調査した報告によると「副作用が心配」と答えた割合が60%以上であったとされています。

しかし、その多くが成分や作用機序についての知識がない状態でのイメージでした。そこで今回はピルとはどのような薬なのか、メリットや安全性などについて解説していきます。

ピルとは

ピルは1960年に世界初の経口避妊薬としてアメリカで開発されました。日本では1999年に発売され、普及していきました。

ピルには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つの女性ホルモン成分が含まれています。

継続服用することで脳(視床下部)からのホルモン産生を抑制することで排卵を抑えます。

また、プロゲステロンによって子宮内膜が薄くなり着床を抑える働きや頸管粘液を濃縮させ子宮への精子の侵入を抑える働きがあります。

これらの効果による経口避妊薬とされてきたピルですが、2008年頃より同様の成分が月経困難症や月経前症候群(PMS)、過多月経などの治療薬として発売され、女性のQOL向上に貢献してきました。

現在では

経口避妊薬=OC(Oral Contraceptives)

治療薬=LEP(Low dose Estrogen Progestin)

と区別されており、LEPは保険適応となっています。

発売当初よりエストロゲンとプロゲステロンの含有量を少なくし、副作用を減らしたものが現代で主流となっている「低用量ピル」です。最近では更に低用量の「超低用量ピル」も多くなってきています。

ピルを服用するメリット

ピルを服用する目的は人によって様々ですが、今回は月経困難症や月経前症候群の治療に重点を置いて解説します。

月経困難症や月経前症候群をまとめて簡単に説明すると、月経前や月経中に腹痛や腰痛、頭痛が生じたり、吐き気やむくみや肌荒れがあったり、精神的にも不安定になりイライラすることです。

これらは「黄体期」と呼ばれる排卵から月経までの10日前後の間に、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量に大きな変動があり、これが身体や精神に影響していると考えられています。

ピルを内服することでエストロゲンとプロゲステロンの変動を抑え、これらの症状の緩和が期待できます。

避妊について

ピルの服用で排卵や着床が抑えられますが、必ずしも100%とは言い切れません。避妊の確率を上げるためには併せてコンドームの装着が重要です。

また、ピルに性感染症の予防効果はないため、感染症のリスクを回避するためにも妊娠を希望していない場合はコンドームを使用しましょう。

ピルの副作用

ピルは頭痛や吐き気、静脈血栓などの副作用が起こる可能性があります。

頭痛や吐き気は飲み始めに起こることが多く、慣れるまでは大変ですが自然になくなっていくことが多いです。

静脈血栓は喫煙や高血圧、心疾患などによりそのリスクが上がるため、注意が必要です。詳しくは産婦人科の先生に相談しましょう。

先程少し出てきた超低用量ピルは低用量ピルと比べ、服用初期の頭痛や吐き気、倦怠感などの発生頻度は比較的少ないですが、不正出血は発生頻度が高いとされています。

しかし、不正出血は服用を続けることで治まることが多いため、気にならない程度であれば2-3か月程続けてみるのもいいでしょう。

ピルの内服方法

ピルの服用方法は商品によって異なりますが、基本的に連続して服用する薬です。

例えば、低用量ピルであるルナベル(LD)は、21日間連続服用し7日間休薬します。その間に月経に似た消退出血が起こり、通常の月経周期に似たサイクルとなるのです。

また、超低用量ピルの中には長期間連続して服用できるメリットを持つものもあります。

例えば、ヤーズフレックスは24日間服用し不正出血が3日間続かなければ最大120日間連続して服用できます。その後4日間休薬して再び24~120日間の連続服用が可能となります。

その他にも、ジェミーナは77日間まで連続して服用でき、7日間休薬し再び内服が可能となります。

長期間連続服用できるピルでは年間の消退出血を約3-4回ほどに減らせることができ、月経前特有の症状や生理時の痛みなどから長く解放されるでしょう。

代表的なLEP(月経困難症や月経前症候群等の治療薬)

低用量:ルナベルLD、フリウェルLD

超低用量:ルナベルULD、フリウェルULD、ヤーズ

連続投与が可能:ヤーズフレックス、ジェミーナ

代表的なOC(避妊薬)

マーベロン、トリキュラー

海外との比較について

日本ではピルには避妊薬や副作用のイメージが強く根付いており、日本の利用者数は欧米諸国に比べてはるかに少ないのが現状です。

ピルの内服に抵抗がある、偏見がある人の陰に月経困難症で何回も救急搬送されたり、月経の期間の生活を楽しめずにいる女性が多いと知ってもらいたいと思います。

まとめ

・ピルは副作用が軽減され、より安全な薬へと進歩している

長期間連続内服可能なピルでは、月経に伴う生理現象の頻度を少なくすることができる

・日本ではまだピルのマイナスイメージが強い

正しい情報を共有し広めることが、女性の明るい未来を切り開く鍵となる

参考文献:

1.松本 佳代子, 福島 紀子, 小林 静子, 津谷 喜一郎(1999):経口避妊薬 (低用量ピル) に対する薬学生のイメージと知識.薬剤疫学,4(1):47-57

2.原田 省(2000):経口避妊薬とステロイドホルモン動態.臨床化学,29(1):53-60

3.ヤーズフレックス配合錠:バイエルウィメンズヘルス

https://whc.bayer.jp/ja/yazflex/

4.現代女性にとってのOCとLEP:バイエル薬品株式会社

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