軽度認知障害(MCI)とは、簡単に言うと認知症の前段階の状態を言います。

認知症では早期発見・早期対応が重要であるため、近年この軽度認知障害(MCI)は注目を集めています。

今回は看護師の筆者が【MCIの概要、症状】【治療方法】について、わかりやすく解説していきます。

軽度認知障害(MCI)とは、認知症の前段階

厚生労働省では、軽度認知障害(MCI)について「物忘れが主たる症状だが、日常生活への影響はほとんどなく、認知症とは診断できない状態。」と定義しています。

わかりやすく言うと、正常ではないけれど認知症でもない【認知症の前段階】です。軽度認知障害(MCI)の人は年間約10~15%(※1)が認知症に移行するという報告もあり、進行していくと認知症になってしまう確率が高いのです。

この軽度認知障害(MCI)の特徴は、物忘れの訴えがあるものの、日常生活動作に支障はなく、全般的な認知機能が正常であることが多いということです。

そのため、本人や家族の「気付き」が早期発見のために重要となってきます。

原因

軽度認知障害(MCI)は、認知症と同様の脳の変化が起きることが原因であると考えられています。認知症の前段階ですので、認知症よりは程度が軽いことが特徴です。

認知症の脳の変化とは具体的には、老人斑、神経原線維変化、脳内の病変や腫瘍の影響などが例として挙げられます。

早期発見が重要!

軽度認知障害(MCI)と診断されたとしても、必ず認知症になるということではありません。

国立長寿医療研究センターの研究で、軽度認知障害(MCI)の高齢者を対象に、診断後4年間経過を調査しています。その結果では、約46%は認知機能が正常に戻ったと報告されています。

軽度認知障害(MCI)は早期に適切に対応することで回復したり、進行を遅らせたりすることが可能です。

ほとんどの場合、認知症になると完治することは難しいため、その前段階での対応が非常に重要となります。

症状

では、軽度認知障害(MCI)ではどのような症状を呈するのでしょうか。

具体的な例を挙げてみましょう。

  • 「あれ」「それ」が増えて、知っている物や人の名前が思い出せない。
  • 物をどこに置いたか思い出せない/置き忘れや、しまい忘れが増える
  • ついさっきのことや、昨日のことが思い出せない。
  • 同じ話を何回も繰り返す。
  • 知っているはずの道で迷うようになった。
  • 自分が何をしようとしたのか思い出せない。
  • 気力が低下し、やる気が湧かない。

軽度認知障害(MCI)は、認知症の前段階ですので、認知症の症状とほとんど同じですが、認知症と比べると軽度で診断基準を満たしません。

認知症の診断基準では、上記のような記憶力の低下に加え、認知機能(判断力/情報処理能力/遂行能力)の低下があり、日常生活に支障を来たす状態を認知症とします。

軽度認知障害(MCI)では、認知症機能(判断力/情報処理能力/遂行能力)は低下がみられないか、あっても軽度で、日常生活には支障を来たしません。

つまり、生活には支障がないけれど、以前より物忘れがひどいなど様子が変わってきたと自覚したりご家族が感じられるのであれば、軽度認知障害(MCI)は疑わしいということになります。

(※うつ病や統合失調症など精神疾患の伴う場合や、器質的な脳の障害のある場合は除外)

軽度認知障害(MCI)と診断される認知症前段階のこの時期は、認知症予防、認知症治療のためにとても重要な時期であるため、ささいな変化でも感じることがあれば迷わずに専門医を受診しましょう。

何科を受診すればいいのか?

軽度認知障害(MCI)を疑う場合、何科を受診すれば良いのでしょうか?

認知症診療は神経内科、脳神経外科、精神科、内科などで行うことができます。

近年では病院やクリニックに併設して「認知症外来」や「もの忘れ外来」などの専門外来が増えていますので、専門外来を受診するのも手です。

多くの科や専門外来で対応しているとは言え、軽度認知障害(MCI)かどうかよくわからない状態でいきなり病院に行くのは、少しためらってしまいますよね。

そんな時は、まずはかかりつけ医や地域の窓口に相談してみましょう。

地域の窓口とは、主に市区町村の役所の専門窓口(「高齢福祉課」「認知症相談窓口」など名称は様々)や地域包括支援センターなどです。地域の窓口では、医師が常駐しているわけではないので、症状に関する相談というよりも、どの病院を受診するか提案されることが多いです。

ネット上の情報のみで判断せず、必ず医者や専門家に相談するようにしましょう。

軽度認知障害(MCI)と診断されたら…

認知症と同様に、軽度認知障害(MCI)も確かな治療方法はまだ確立していません。そのため、軽度認知障害(MCI)の治療は、薬物療法と併用または薬物療法なしで認知機能訓練や生活習慣の改善などが主に行われます。主な治療方法は以下です。

生活習慣病の予防

肥満、高脂血症、高血圧、耐糖能異常などを伴う「メタボリックシンドローム」は、アルツハイマー型の認知症の危険因子です。

近年では、糖尿病とアルツハイマー型認知症にも深い関係があることが示されています。

これらの疾患にならないよう、生活習慣を改善していくことが重要です。

既に糖尿病である場合は、確実な治療を行い経過を良好にコントロールしていくことが求められます。

食事療法

認知症の発症には、酸化ストレス、脂質やアルコールが関係するという報告があります。

栄養バランスを考えて食事を摂ることは前提に、野菜や青魚などを積極的に摂取しましょう。

青魚や亜麻仁油、エゴマ油に多く含まれるDHAは認知機能の維持・向上に効果があります。肉より魚を摂取するようにしましょう。

現在サプリメント(ビタミン、その他)の認知症予防効果は実証されていません。(試験そのものが行われていません)

運動療法

運動をすることはメタボリックシンドロームの予防となり、結果認知症予防にも繋がります。

また、習慣的に運動を行い筋力を維持していくことで、高齢者のケガの予防効果も期待できます。

高齢者では、骨折などケガをして活動量が低下すると、認知機能の低下を引き起こす可能性が高まるため、筋力や体力の維持をする目的でも運動は継続的にすることが推奨されます。

とはいえ、激しい運動をする必要はありません。特に高齢の方の場合、ケガをしないように十分注意して下さい。

30分以上のウォーキングを週に3回以上行うと認知機能低下に効果期待できます。(※2)

社会活動へ参加する

認知症のない高齢者を対象に、読書や音楽/テニスや水泳、ダンス、家事などの‘趣味 ’の活動の頻度と認知症発症との関係を調べた研究があります。(※3)

その結果、体を動かす趣味よりも、読書や音楽などの知的活動では有意に認知症発症数を減少させました。体を動かす趣味のうち、認知症発症を低下させたものはダンスのみであったことが報告されています。

老後に、趣味を持つことは認知症予防に効果があると言えます。

趣味だけでなく、社会のなかで役割を持つことも認知症予防に効果的です。

まとめ

現在、確実な認知症治療方法がないため

軽度認知障害(MCI)の段階で、気付き、対応していくことは、認知症を予防したり進行を遅らせるために非常に重要です。

「ただのもの忘れ」で済まさず、以前と違う変化を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

参考・引用文献

※1:Peterson RC, Rachelle Doody, Alexander Kurz, Richard C. Mohs, John C. Morris, et al.: Current concepts in mild cognitive impairment. Arch Neurol 58; 1985-1992, 2001

※2:Lord SR, Castell S, Corcoran J, Dayhew J, Matter B,Shan A, Williams P : The effect of group exercise on physical functioning and falls in frail older people living in retirement villages : a randomized, controlled trial. J Am Geriatr Soc 2003 ; 51 : 1685.1692

Larson EB, Wang L, Bowen JD, McCormick WC, Teri L : Exercise is associated with reduced risk for incident de- mentia among persons 65 years of age and older. Ann In- tern Med 2006 ; 144(2): 73.81

※3:Verghese J, et al:Leisure activities and the risk of dementia in the elderly. N Engl J Med 2003;348:2508-2516

参考ページ

 e-ヘルスネット 厚生労働省

 認知症予防・支援マニュアル(改訂版)厚生労働省

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